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栄光なき凱旋

栄光なき凱旋.jpg

『栄光なき凱旋』(上下)
真保裕一著 小学館 各1995円(税込)


私の好きな作家の一人、真保裕一氏の新刊です。
ミステリーに始まり、ハードボイルド、山岳小説など幅広いジャンルに挑戦する作家ですが、
今回は太平洋戦争ということで、初めての歴史ものです。
主人公は、ロサンゼルスのリトルトーキョーに住むジロー・モリタ、ヘンリー・カワバタ、
そしてハワイ在住のマット・フジワラの3人の日系二世たち。
彼らの運命は、12月8日の日本による真珠湾攻撃により、大きく変わっていきます。
アメリカ国籍を持っているにも関わらず、いわれなき迫害を受ける日系人たち。
そのなかで彼らは、アメリカという国への忠誠を証明するために、
自らアメリカ軍に入隊し、父母の国である日本と戦うことを選ばざるを得なくなっていきます。
日本語能力を買われ、南太平洋で日本人捕虜の尋問の任務にあたるジロー。
そのジローとともに、日本を罠にかける作戦に投入されるマット。
日系人部隊の一員として、激戦のイタリア戦線に送られるヘンリー。
そして彼らが戦場で出会うとき、さらに苛酷な運命が…。


日本の真珠湾攻撃の後、アメリカ本土やハワイの日系人たちがどんな扱いを受けたか、
二つの祖国を持つ日系二世たちの苦悩、そして彼らが誇りを失わずに生きるために
いかなる選択肢を取ったのか、を丁寧に描いていきます。
「日本人」とは、「愛国心」とは何かを正面からとらえた重いテーマでありながら、
サスペンスの要素も盛り込み、きちんとエンタテインメントとして成立しているのが
真保氏の面目躍如というところ。
最近は、福井晴敏氏や古処誠二氏など、エンタテインメント界の若手作家が
「戦争小説」を描くことが増えています。
戦後六十年たったいま、新しい世代が新しい視点から戦争を捉え直そうとする動きが
高まっているような感じがします。いろいろと読み比べるのが楽しみです(横)

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