「そりゃジイさん! あんたの理屈だ!」
今、編集部で「一度使ってみたいセリフ」として、ひそかに流行っている言葉です。
この言葉はもともと、8月号の特集で採り上げている
白洲次郎という人物が発した言葉でした。
白洲次郎といえば、これまではエッセイスト白洲正子の伴侶として
語られることが多かった人物です。
背が高く、顔もめちゃくちゃ格好いい。
イギリス留学で完璧な英語と紳士的な態度、お洒落さも身につけ、
「ジーンズを初めて穿いた日本人」という称号さえあります。
「日本一格好いい男」という表現も、よく使われているくらいです。
しかし、白洲次郎の格好よさは、何も見た目だけではありませんでした。
日本人が敗戦と占領の屈辱に意気消沈していた昭和二十年冬
当時、天皇をも超える絶対権力者であった連合国軍最高司令官マッカーサーを、
面と向かって叱り飛ばした日本人がいました。
その男こそ白洲次郎です。
「戦争には負けたけれども奴隷になったわけではない」が口癖だった次郎は、
日本人離れした体躯と英国流のダンディズムで、
アメリカ人と相対しても位負けしませんでした。
次郎はGHQ要人に「従順ならざる唯一の日本人」と言わしめたように、
勝利者におもねらず、矜持と誇りをもって占領者と交渉を続けました。
常識からいえば、一見破天荒なように見える彼の行動には、
いつもすっきりと一本、際立った筋が通っていました。
それこそ、次郎が生きる上で常に守りつづけた原則「プリンシプル」でした。
正義感が強く、曲がったことが嫌いで、ウソをつかない。
虎の威を借る尊大な人間を蛇蠍のごとく嫌い、それでいて女や子供には無類にやさしい。
まさに「昭和の侍」ともいうべきこんな男が占領下の日本にいたことは、
今の我々にも勇気を与えてくれるではありませんか。
「そりゃジイさん!」のセリフは、
白洲次郎が政策で対立した、30歳以上年上の人物に発した言葉ですが、
間違っていると思う相手に、そう言い放てたらどれだけ痛快でしょうか。
しかし、白洲次郎ならぬ凡人の我々には、そんな言葉を言い放つ勇気が……。
なかなかその生き方は真似ができるものではありませんが、
彼のエピソードは、今の私たちに元気を与えてくれます。
ぜひ、この機会に白洲次郎という男の人生に触れてみてください。(横)