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官僚の責任


[著者] 古賀茂明
[本体価格] 720円(税別)
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まえがき

はっきり言う 霞が関は「人材の墓場」だ


「想定外」の大地震と大津波に、「起きるはずのなかった」原発事故が加わった東日本大震災は、自助と助け合いの精神にあふれた日本国民のすばらしさを示すと同時に、この国の政府のだらしなさ、無策ぶりをも世界じゅうに知らしめることになった。
「三重苦」に見舞われながらも、将来に向けて着実に足を踏み出そうとする国民がいる一方、本来ならば先頭に立って復興へのビジョンと道筋を示すべき政治家たちは、被災者を見殺しにするかのごとく無為な権力闘争に明け暮れるだけで、いっこうに責任を果たそうとしない。その醜悪にして情けない姿は、まさしく「四つ目の災い」であり、日本国民の閉塞感と政治不信は、これ以上ないほど高まっている。
 政治家たちがどうしようもないのは事実である。その無能、無責任ぶりに腹が立ってしかたがないという国民が大多数だと想像する。
 しかしその裏には、政治家同様、この非常事態に際してみずからの責任を放棄して恥じない人間たちがいる。それどころか、自分たちの利権維持のために汲々として懲りない人間たちがいる。
 そう、霞が関の住人である官僚たちである。
 最近、若手官僚たちと話す機会が増えた。彼らに訊いてみると、これだけの大惨事を前にして、ふだんは評判の悪い官僚もさすがに今回は危機感をもち、連日徹夜で作業に当たった。国を支えるという意識は高かった。
 しかし、純粋に日本のために、被災者のために、とがんばる若手から見ると、官邸の機能不全とともに、責任回避と省益にとらわれる悪弊から抜けきらない中堅・幹部が多いことに違和感を覚えたという。この期におよんで、東電と銀行を守れと強い指示を出す幹部を見て、若手はやりきれない思いを抱いているというのだ。
「これは、大チャンスだ――」
 震災が起きたとき、少なくない数の幹部官僚がそう考えたはずだ。少なくとも頭の片隅にそのような考えがよぎる、それは官僚の本能と言ってもよい。悲しい性なのだ。復旧・復興のためには国民負担が避けられず、非常事態であるだけに増税を口にしても反対は起きにくい。したがって、長年の懸案だった増税に堂々と踏み切れるだけでなく、今後「復興のため」という名目でさまざまな組織や機構が立ち上げられると予想される。一部の官僚は、ほくそ笑んだことだろう。
「これで新たな利権と天下りポストを確保できるぞ……」
 言うまでもなく、官僚が果たすべき責任とは「国民の生活を第一に考え、国民のために働く」ことにある。
 しかし、これだけの国難にあたってもなお、無意識のうちに省益のことを考え、みずからの利益確保に奔走する彼らの姿は、政治家と違って国民の目に直接ふれることが少ないだけに余計タチが悪いが、官僚の思考がそのような回路をたどるのは、もはや彼らの習性と言うしかない。何か物事を進めるときには自動的に自分たちの利益を最優先するよう、いわばプログラミングされているのである。
「官僚=優秀」――そういうイメージを一般の方々は抱いているかもしれない。が、だとすれば、いまこの国を覆っている重苦しさはどういうことなのか。ほんとうに官僚が優秀であるならば、どうしてこの国は、国民の多くが将来に対して明るい希望をもちにくくなってしまったのか――。
 つまり、官僚は決して優秀ではないし、必ずしも国民のことなど考えて仕事をしていないのだ。たとえ官僚になるまでは優秀だったとしても、いつの間にか「国民のために働く」という本分を忘れ、省益の追求にうつつを抜かす典型的な「役人」に堕していく。それが「霞が関村」の実態なのである。
 経済産業省の官僚として霞が関で30年を過ごしてきた私は、2011年5月に『日本中枢の崩壊』(講談社)と題する本を上梓した。そのなかで私は、自分の官僚生活もふりかえりながら、国家公務員制度改革の重要性と緊急性を訴え、その方策についてもさまざまな提言を行った。
 幸いにも多くの読者の方々の支持を得て、霞が関の同僚や後輩からも「がんばれ」「辞めるな」「応援します」と賛同と励ましの声をたくさんもらった。上司には「売名行為だ」と叱責されたことがあったものの、内容についてはいっさい詰問されることはなかった。私の主張の正しさを否定することはできなかったのだろう。
 そこで本書では、「優秀であるはずの官僚がなぜ堕落していくのか」「何が彼らを省益に走らせるのか」といった官僚の行動心理を、具体例をもとにできるかぎり平明に解説しながら、外部からはうかがいにくい霞が関の実像を紹介することに主眼を置いた。
 そうすることで、読者の方々にも「官僚の責任とは何か」という漠然とした、しかし本質的な疑問をもう一度考えていただくとともに、官僚に責任をまっとうさせるための国家公務員制度改革の必要性とその具体策をあらためて広く問いかけたいと考えている。
 なぜなら、真の国家公務員制度改革を実現できるのは、政治家ではなく、ましてや官僚自身でもなく、国民の力にほかならないからだ。国民一人ひとりの現状に対する怒り、不満、改革を求める強い声が、政治家を動かし、ひいては官僚たちをして自分たちの責任を省みさせることになる。本来の受益者である国民の声を結集することが、国家公務員制度改革への近道なのである。
 新書という、一般の方々がより手に取りやすいかたちで世に出ることになった本書が、一人でも多くのみなさんから改革の声があがる契機となれば、これに勝る幸せはない。
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