西洋音楽から見たニッポン
発売日
2007年05月21日
判 型
四六判上製
ISBN
978-4-569-65954-1

西洋音楽から見たニッポン
俳句は四・四・四

著者 石井宏著 《作家》
主な著作 『反音楽史』(新潮社)
税込価格 1,650円(本体価格1,500円)
内容 日本人の音楽感性はかくも精妙にして複雑で、西洋音楽の原理はかくも粗雑で単純である! 音楽文化を通じて語る、異色の日本人論。



 雪は静かにしんしんと降り積み、夜は静寂に包まれている――。こうした雪の持つ「音のない世界」を表現するために、日本人は、低く、くぐもった「ドン・ドン・ドン」という太鼓の連打を発明した。きわめて無機的に、機械的な単調さで、平坦に鳴らされるその音は、音を使って、「音のない静寂の空間」を心の中に出現させてくれる。「音のない世界を、音で描く」という発想は、西洋人の合理主義からはけっして生まれてこない。すべては東洋人の直観ないし直感の賜物である――と著者は説く。

 西洋音楽に代表される西洋的思考と、日本語や日本音楽の持っている土壌が、いかに違うか。詳しくは本書における著者の精緻な論考に譲るが、結論的に言えば、両者はあまりにも違う土壌の上に咲いた文化であり、同一の精神構造で捉えるのは困難だということである。だが、その事実を本書の読者は確認すると同時に、日本語の美しさと日本人の感性の豊かさを再発見するだろう。