人名事典

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上野俊哉

(うえの・としや)
 一九六二年宮城県生れ。中央大学大学院博士課程中退。専攻は社会思想、哲学、文化研究、メディア研究。

 九二年発表の『思考するヴィークル』(洋泉社)で注目を浴びる。現代社会の根底にある概念として「速度」に着目したこの書は、クルマを「ぼくたちの生そのもののリズムをあるノリにのせる機械」と規定し、現代人がいかにクルマやパソコンといった速度のあるヴィークルを通して、あるいは自身ヴィークルと化して思考しているか、その実存的な諸相を描いてみせた。たとえば、「現代の都市は、車のフロントガラスを通して、テレビの画面や映画のスクリーンのように見るもので、それこそが実像なのだ」と。モノあるいはモノ体験に即した誠実な思考は、奇をてらわず力強い。

 他の著書に『シチュアシオン』(作品社、96年)など。

(データ作成:1997年)