人名事典

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中村 元

(なかむら・はじめ)
 1912年島根県生れ。東京帝国大学卒。東大教授、東方学院開設、日印文化協会会長を経て、現在に至る。

 インド哲学の第一人者。精神世界の重要性を見失った私たちに碩学が語る釈尊の言葉の重さは? 『プレジデント』(91年7月号)の特集では、中村氏の説法が冴え渡る。「汝、心の修養を心掛け寛容の精神を持ち傲慢になることなかれ。民族意識も一緒だ。自ら愚であることを知ればすなわち賢者なり。自分たちの国が卓越したと思うと傲慢になり、過ちを犯す恐れが出てくる。すなわち民族も国家も個人も常に無我、虚心に人の言に耳を傾けるべし」。真の賢者は自らが愚者だと悟る者のこと。ソクラテスの教えに共通する。仏教では力のない人も他人を助け人に尽すことができる。仏典の翻訳(岩波文庫から出ている)など、驚くべき業績を残している。

 主著に『仏典のことば』(サイマル出版会、89年)、『脳とこころをさぐる』(共著、朝日新聞社、90年)、『人生を考える』(青土社、91年)。

(データ作成:1998年)