人名事典

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中村隆英

(なかむら・たかふさ)
 一九二五年東京都生まれ。東京大学経済学部卒業後、同大学助教授・教授、お茶の水女子大学教授をへて、東洋英和女学院大学教授・東京大学名誉教授。

 日本経済史の第一人者。アカデミズムでの名声は高く、六五年の『現代の日本経済』、七八年の『日本経済 その成長と構造』(いずれも東京大学出版)を教科書として読んだエコノミストも多いはず。

 視野が広くバランスのとれた現代経済史の記述は、一般向けの『昭和史1・2』(東洋経済新報社)となって結実。類書としては異例といえる多くの読者を獲得するとともに、九三年の大佛次郎賞を受賞した。「高度成長が終わるまでのところは書くのが比較的たのしく、そのあとが苦しかった。昭和前半は政治と軍事の時代、後半は経済の時代と分けていいように思っていたが、とくに田中角栄内閣のあとは、政治史がつまらなくなるのである」とは、同書の「あとがき」である。

 最近は、不況の深化のなかで「昭和恐慌に学ぶ」(『This is 読売』九八年三月臨時増刊)を執筆。昭和恐慌との比較から「事態は建前論で対応できるほど甘いものではない……金融システムへの信頼を回復することは、当面第一の急務」と論じている。

 著作に『昭和恐慌と経済政策』(講談社学術文庫)、『昭和経済史』(岩波書店)など多数。

(データ作成:1997年)