人名事典

>> 検索トップへ

塩沢由典

(しおざわ・よしのり)
 一九四三年長野県生まれ。京都大学理学部卒業後、フランスに留学中に経済学に転向。同理学部助手、同経済研究所助手、大阪市立大学助教授を経て、教授。

 いわゆる「複雑系の経済学」をリードする経済学者の一人。「複雑系」によって新時代が到来したかのように論じた研究者が多いなかで堅実に研究を進め、その成果を一般の人に分かりやすく解説した『複雑系経済学入門』(生産性出版)は好著として知られている。同書で氏は「経済学がお仕着せの解決策を提案できるほど、経済や社会は単純なものではありません。経済の複雑さと経済問題の困難さに気づいてもらうこと。それが複雑系経済学の一つの重要なメッセージ」と述べる。

 この慎重さは、現実の経済問題を論じる際にも充分発揮されている。『Thisis 読売』九八年五月号では、アメリカ流経済学のみに依拠して日本の現実を論じる危険を指摘。「(彼ら経済学者は)経済学をしっかり学びすぎて、見方が通り一遍になっている」と論じた。今後の論壇での活躍が期待される。

 著作にサントリー学芸賞を受賞した『市場の秩序学』(ちくま文庫)、『複雑さの帰結』(NTT出版)などがある。

(データ作成:1997年)