人名事典

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多田富雄

(ただ・とみお)
 一九三四年茨城県生れ。千葉大学医学部卒。東大教授を経て、東京理科大学生命科学研究所長。東大名誉教授。

 一貫して「生と死」について深い洞察をめぐらす。『免疫の意味論』(青土社、93年)で大佛次郎賞受賞、注目を集める。『潮』(94年1月号)「死のかくも長いプロセス」では、「死」の受け止め方を直覚に基づいた「死の感知」と、知識と概念による判断である「死の認知」とに二分類する。人間社会は基本的に死の感知を大切にしてきたが、現代は死期の患者に大勢の家族が立ち会うことはまれだ。九一年脳死を題材に『無明の井』という能を書き下ろした。脳死状態の男が「われは生き人か死に人か」と脳死判定の可否を問う。

 著書に『免疫学入門』(医薬の門社、83年)、『生と死の様式』(共著、誠信書房、91年)ほか。

(データ作成:1997年)