人名事典

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山室恭子

(やまむろ・きょうこ)
 一九五六年東京都生まれ。東京大学文学部大学院中退、東京大学史料編纂所助手をへて東京工業大学助教授。

 一般の読者には一九九二年の『黄金太閤』(中公新書)で知られるようになる。本書では、派手好みとされてきた豊臣秀吉の祭り好き・イベント好きを、政治的パフォーマンスとして捉え、豊臣政権に見られた拡大志向とその矛盾に新しい光を当てた。

 歴史ファンの間では、それ以前にもパソコンを歴史分析に持ち込んだ新進の戦国社会研究者として注目されていた。九一年の『中世のなかに生まれた近世』(吉川弘文館)では、戦国時代の「印判状」と「判物」を分析、パソコンで整理して戦国時代における「東国の官僚的非人格的支配」「西国の人格的ネットワーク的支配」を見事に図版化・数字化して見せ、サントリー学芸賞を受賞した。

 さらに、この研究の延長上で『岩波講座 日本通史 中世4』に「戦国の地域性」を執筆。戦国時代が活力を持ったのは、むしろ各地域に差異があったからだとして、現在の一律志向の地域開発論に再考を促す視点を提供している。

 手法においても、論文の文体においても大胆な試みを行う、歴史学におけるニュー・ウエーブの一人。

 論文に「毛利氏における中世と近世」(『史学雑誌』九五年一〇月号)などがある。

(データ作成:1997年)