人名事典

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庵野秀明

(あんの・ひであき)
 一九六〇年山口県生まれ。大阪芸術大学中退。宮崎駿監督の「風の谷のナウシカ」制作に参加。アニメ制作会社ガイナックスに入社、九五年に放映された「新世紀エヴァンゲリオン」を監督、九七年には映画化する。

 庵野氏の、直接社会に向けた発言は多くないが、「新世紀エヴァンゲリオン」による十歳代後半、二十歳代、三十歳代(当時)への影響が明らかになってくるのは、実はこれからではないかと思われる。九七年当時も、数十冊を超える「エヴァンゲリオン」解釈本が出版され、若手評論家たちが競ってこの作品について論じた。

 たとえば、宮崎哲弥氏は「オカルト、ニューエイジ、自分探し、自己開発セミナー、脳内革命、援助交際、アダルト・チルドレン……といった流行や社会現象と根が同じ」と指摘し、「『エヴァ』はむしろ一種の宗教的テキストとして流通している」と述べた。また大塚英志氏は批判をしつつも、「『新世紀エヴァンゲリオン』と酒鬼薔薇聖斗によって記憶されるであろう一九九七年」という表現をせざるを得なかった(いずれも『諸君!』九七年一〇月号)。

 当事者の庵野氏は、文芸評論家・福田和也氏との対談(『Voice』九八年六月号)で「庵野さんの世界観がフルに出たはじめての作品」ではないかと問われて、「何でもよかった……あんまり深く考えていない」と答えているが、社会的な波及効果は余りにも「深く」広かった。福田氏は「先行のアニメ作品から古代キリスト教まで非常に多様な要素を織り込んで」非常なパワーを持つに至ったのではないかと語っている。

 九七年に実写の作品「ラブ&ホップ」(原作・村上龍)を制作、また九八年の秋からアニメ彼女の事情」(原作・津田雅美)が放映される予定。

(データ作成:1998年)