人名事典

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池澤夏樹

(いけざわ・なつき)
 一九四五年北海道生れ。父親は故・福永武彦氏。埼玉大学理工学部中退。

 『夏の朝の成層圏』(中央公論社、84年)で小説家デビューして以来、解放感に満ちた筆致で、近代文明により失われた人間と自然とのつながりを回復する思考実験を重ねてきた。あるときは異境での出会いと相互変容の過程を描くことで、あるときはマジック・リアリズムの手法で。九四年那覇移住をきっかけに、「むくどり作家」として世界各地を行脚。小説を発表する機会は減ったが、持ち前の科学の才とジャーナリスト感覚を駆使して、エッセイ、随筆、科学読み物などで八面六臂の活躍を続けている。「大いなる物語のない時代」に、リアリティの根拠を「ただ絶対的にそこにある自然」に見いだす、現在もっとも骨太な作家。

  著書に『スティル・ライフ』(中央公論社、88年、芥川賞)、『マシアス・ギリの失脚』(新潮社、93年、谷崎潤一郎賞)ほか。

(データ作成:1997年)