おすすめ連載 [PHPほんとうの時代 2008年8月号]

句・文・写真/森村誠一

朝顔に 遅れて起きる 古き街

歴史が堆み重なる古い町並を歩くのが好きである。
それも有名な史蹟や由緒ある古社寺よりも、ごく平凡な古い町が好きだ。
権力者や歴史上の人物よりも、無名の庶民の人生が築き上げた路地や町、そんな町角にこそ、多彩な人間群像の溜め息が聞こえてくる。
人生の無数の破片が、堆く積まれているのもそんな町角である。
朝靄の屯する古い町角に朝顔がひっそりと咲いている。
町の住人たちは、まだ起き出してこない。
歴史の古い町の住人ほど、朝寝坊が似合う。
観光コースからもはずれた古い町は、先祖累代の営みを忠実に踏襲して頑固に朝寝しているように見える。
あくせく走りまわっても、所詮、悠久の時間に呑み込まれてしう。