Voice
発売日
2014年7月10日
税込価格
713円
(本体価格648円)
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Voice 2014年8月号

今月号の読みどころ

集団的自衛権の行使容認をめぐり、国論が二分している。「戦争ができる国」になったと煽るのは『朝日新聞』と、なぜか『朝鮮日報』だ。悪意のある国が攻めてきたとき、自国を防衛し、同盟国を守るのは「普通の国」のやることではないのか。「国土を防衛する手段として武力を行使することは、憲法に違反しない」というのがわが国の立場だ。なぜ「憲法破壊だ」と騒ぐのか。そもそも集団的自衛権は、国連憲章51条で認められている国家固有の権利である。永世中立国で徴兵制のあるスイスを除けば、日本だけが集団的自衛権を制限している。これまで「権利はあっても行使はできない」との憲法解釈を維持してきたが、解釈変更でようやく「普通の国」になったと喜ぶべきではないのか。

今月号の総力特集は、「日中冷戦、変わる自衛隊」と銘打ち、今年7月に発足から60年目となる自衛隊と集団的自衛権の関係を論じた。櫻井よしこ氏は、「集団的自衛権を認めることは、弱者を含めて私たち国民の生命、人権を守るということにほかなりません。けっして『地球の裏側まで行って戦争に加担する』ということではありません」と述べ、『朝日新聞』は他紙以上に「人権」「生命」「弱者」を重んじてきたのに、なぜ集団的自衛権行使を否定するのかがわからないと呆れる。田母神俊雄氏は、「中国の軍事力は強い」という情報戦、心理戦に負けてはいけないと説く。「中国と戦争になったら自衛隊に勝ち目はない。死者が出る前に、尖閣問題では譲歩して引くべきだ」という意見の裏には、中国の「戦わずして尖閣を掠め取る」戦略が見え隠れするという。ロシアや中国が拡張主義を進める一方で、オバマ政権は海外への軍事介入に消極的である。こうした国際情勢の下、前防衛大臣である森本敏氏は、日米同盟の強化がアジア・太平洋の平和と安定のためには不可欠であり、そのための法整備を急ぐべきだと強調する。

巻頭の対談では、現在論争が巻き起こっている『朝日新聞』のスクープ問題を取り上げた。5月20日付けの『朝日新聞』では「所長命令に違反、原発撤退 福島第一、所員の九割 政府事故調の『吉田調書』入手」と一面トップで報じた。これに疑義を挟んだのが、福島第一原発の故吉田昌郎元所長を取材し著作もある門田隆将氏だ。対するのは、元『週刊朝日』編集長で編集委員も務めた川村二郎氏である。問題の所在を明らかにし、今後取り組むべき方向性を示したという点で、有意義な議論が交わされている。ジャーナリズムとは何かを考えるうえでも、ぜひ、ご一読いただきたい対談である。
公式サイト

今月号の目次

巻頭激論
「吉田調書」を全文公開せよ
門田隆将/川村二郎
22p
総力特集:創設60周年 日中冷戦、変わる自衛隊
特別インタビュー
『朝日』と中国から日本を守れ
櫻井よしこ
40p
日本の隣国は腹黒い
田母神俊雄
50p
日米同盟強化のための法整備を急げ
森本 敏
58p
足踏み状態の離島防衛
潮 匡人
68p
サイバー戦争に備えよ
菊池雅之
76p
自衛隊員の本音を聞け
世良光弘
84p
海外で地雷除去に励む元自衛官たち
荒川龍一郎/取材・構成:夏目幸明
92p
新ガイドラインは対中メッセージ
守屋武昌
100p
建軍の本義を問う
源川幸夫/福山 隆
108p



短期集中連載
スキャンダラスなヤルタ会議〈前編〉
有馬哲夫
120p
ワシントンから見た「良い安倍」「悪い安倍」
グレン・S・フクシマ
128p
〈新連載〉説教ストロガノフ
支那は日本と戦争できるか
上念 司/倉山 満
138p
東京駅と日本橋を結ぶ物語
柴崎信三
148p
クラシックに言語の壁はない
アリス=紗良・オット/聞き手:タカ大丸
156p
児童書と戦争
尾崎真理子
166p
AI、いかにしてグーグルに勝つか
村上憲郎/松尾 豊
188p



新世代の流儀
「心が震えるほどにうまさを感じる料理はいまもやはりあるんです」
花澤 龍/取材・構成:木村俊介
173p



ニッポン新潮流〈国内政治〉
人口減少を抑制できない政治構造
菅原 琢
32p
ニッポン新潮流〈経済政策〉
「やったふり」の産業政策はやめよ
飯田泰之
34p
ニッポン新潮流〈生活社会〉
憲法解釈の議論には意味がない
山形浩生
36p
ニッポン新潮流〈科学医療〉
日本は乳がん対策後進国
最相葉月
38p
テロリスト・安重根〈第6回〉
亡命
早坂 隆
197p
乙武洋匡、世界の大使に会いに行く〈第5回〉
躍進する民主主義国家インド
乙武洋匡
207p
武士の碑〈第11回〉
父と子
伊東 潤
215p
覚醒するクラシック〈第14回〉
マタイ受難曲
百田尚樹
233p
巻頭言〈8〉
W杯の見栄張りナショナリズム
小浜逸郎
19p
私日記〈第176回〉
用意周到・当意即妙
曽野綾子
238p
平成始末〈第56回〉
地を這い空を飛んだ歌
山折哲雄
250p
友アートを訪ねて〈19〉
[相原求一朗]
原田マハ
8p
凜たる女性〈44〉
[黒木利佳]
撮影/遠藤 宏
13p



Killerフレーズ
時代を斬る!論点

1p
Voiceブックス
編集者の読書日記

246p
Voiceシネマ
編集者の映画三昧

247p
Voiceレター
読者の感想&意見

248p

Voice とは

 月刊誌『Voice』は、昭和52年12月に、21世紀のよりよい社会実現のための提言誌として創刊されました。以来、政治、国際関係、経済、科学・技術、経営、教育など、激しく揺れ動く現代社会のさまざまな問題を幅広くとりあげ、日本と世界のあるべき姿を追求する雑誌づくりに努めてきました。次々と起る世界的、歴史的な変革の波に、日本社会がどのように対応するかが差し迫って闘われる今日、『Voice』はビジネス社会の「現場感覚」と「良識」を基礎としつつ、つねに新鮮な視点と確かなビジョンを提起する総合雑誌として、高い評価を得ています。