頁数/仕様
208ページ / 縦:18.8cm 横:12.9cm
初版
2012年11月
在庫
在庫あり

子どもの心を“荒らす親”・“整える親”
感情コントロールができる子に育てる

わが子を荒れた子にしないために、やってはいけない「叱り方・ほめ方・接し方」を紹介しています。子どもの発達に合わせて適切な子育てをすれば、子どもの心は自然と整います。
著者(肩書) 河井英子《武蔵丘短期大学教授》
主な著作
編集等
税込価格 1,320円   (本体価格:1,200円)
対象 幼児~小学校低学年の保護者
頁数/仕様 208ページ / 縦:18.8cm 横:12.9cm
初版 2012年11月

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■小一プロブレム
小学校一年生のクラスでは、数年前から異変が起きています。席についていられない子や、先生の指示に従えない子、友だちにちょっかいを出してすぐけんかになってしまう子などが増えて、先生を悩ませているのです。そんな子どもがクラスに何人もいて、なだれのような連鎖反応を起こし、学級崩壊といわれる現象も生じています。それは特別なことではなく、今や多くの小学校で見られる“当たり前”の光景となっています。そして、このような現象を示す“小一プロブレム”という言葉も常識として定着してきました。かつての小学校一年生といえば、かわいらしくて先生の言うことは素直に何でも聞くものでした。そういう光景は今や昔のことなのでしょうか。
たいていの自治体では、“小一プロブレム”の対策として、特別の人員を手あてしています。担任の先生のほかに、もう一人先生を配置して、子どもたちへかける目と手を厚くして対応しています。暴れて走り回ったり、物を投げたり、つかみ合いをしていた子どもが、そういう先生には赤ちゃんのように甘える姿もしばしば見られます。

■感情コントロールができない子・感情を表さない子
幼稚園の先生が、最近の子どもたちは感情のコントロールができないと嘆いていました。「突然つかみ合いのけんかになってしまって、引き離すのに苦労した。そばにいた子どもたちに聞いてみても、たいした原因があったわけではないのに。ちょっとした言い合いが、エスカレートします」と言います。そんなケースは日常茶飯事で、起こらない日はないと言うのです。そうかと思うと、突然物をほうり投げて大声でわめき散らす子どももでてきます。お弁当の時間は大変。手でつかんで食べる子や、ぼろぼろと食べ物を散らかす子どもも多いそうです。幼児なので仕方ないとは思うものの、これらが最近の子どもに目立ってきていることを案じていました。
激しい行動を示す子がいる一方で、不可解なことをする子もいます。遠足の帰りに、集合したらAちゃんがいないことがわかりました。大声で呼んだりしましたが手がかりがなく、先生たちは青くなって探し回りました。およそ三十分以上たってから、近くの木の茂みの下に黙ってうずくまっている姿が発見されました。
このように、子どもが自分の感情をなかなか表さなくなることもあります。先生は、困ったときは泣いてもいいのに、なぜ助けを呼ばないのだろうと困惑していました。

■街で見かけた光景
スーパーのお菓子売り場で駄々をこねている子がいました。お母さんは困ってなだめていますが、言うことを聞きません。次第にエスカレートして、床に寝転がって足をバタバタしています。お母さんも声を荒らげています。そのうち、棚から一つ二つお菓子を取って、お母さんに向けて投げ始めました。お母さんの声はますます大きくなって、何事かと周りのお客さんたちが足を止めて見ています。
昼過ぎの比較的すいている電車に、一組の親子が乗ってきました。子どもはやっと歩き始めたくらいで、お母さんに抱っこをねだっているようでした。しかし、お母さんはすいている席に子どもを座らせて、バッグから本を取り出して読み始めました。少したつと子どもがぐずり始めました。子どもはだんだん大きな声で泣き出し、次第に声を張り上げ、泣き叫んでいます。お母さんは片方の手で子どもをあやしながら、目は本から離しません。子どもはエスカレートする一方でした。
学校帰りの子どもたち。一人の子が、ほかの子どもたちに向かって何やら大声でわめいています。足でけったり、友だちのランドセルをドンドンとたたいたりしています。ときどき聞こえる言葉は、暴力的で攻撃的な言葉です。周りの子どもたちも困っているようですが、なんとなくあまりかかわらないように遠巻きにして眺めています。
以上のような光景は、決して珍しいものではありません。挙げればきりがないほど、似たような光景を目にします。子どものことですから、泣いたりわめいたりするのは当たり前かもしれません。しかし、とどまるところを知らずにエスカレートしていき、次第に周りも巻き込んで荒れていく様子は少し心配です。
最近、電車の中などで、一人でぶつぶつと怒っている大人をよく見るような気がします。自分の怒りを適切に処理できない大人たちが、あちこちに増えているのかもしれません。大人がそうであるならば、ましてや子どもにおいては仕方のないことかもしれません。子どもは大人を映す鏡なのですから。

子どもたちに、子どもらしい健全な成長を願っている大人として、このような状況を見過ごすことはできないような気がします。原因を確かめるなり、ただすなりして、子どもの「荒れ」を整えていかなければなりません。たやすいことではないと思いますが、せめて親御さんには、できるだけの手立てを講じてほしいと思います。
子どもが荒れる原因を探ることは、子どもを取り巻く環境や、発達の正しい筋道を改めて見直してみることかもしれません。この本ではそういうことを含めて、しかしなるべく具体的な子育てのヒントとして、参考にしていただけることを挙げていきたいと思います。時には、親自身の生活にかかわる問題も見直す必要があるかもしれません。
親の目から見ると、子どもの発達はじれったいほど遅々としています。子どもへの不安が永遠のもののように感じられることもあります。しかし、通り過ぎてみればほんの一瞬に近い時間です。その時間の中で、確実に子どもは成長という変化を遂げているわけですから、しっかりとその姿を見つめていくことが必要です。子どもに密接にかかわれる人は、ほかでもない親しかいません。親としての役目と思って、子育てに向き合ってください。  (「はじめに」より)

【第1章】荒れている子のサインに気づく
(1)激しく荒れる子
・激しい「荒れ」行動は、外側への発散行動

(2)激しい「荒れ」行動の意味
〈事例1〉泣き叫ぶ、泣き止まない(2歳・男の子)
〈事例2〉かんしゃくを起こして物を投げる、壊す(4歳・女の子)
〈事例3〉物を壊す、破壊行動をとる(4歳・男の子)
〈事例4〉お友だちに暴言を吐く(5歳・男の子)
〈事例5〉弟と仲良く遊べず、すぐに手が出る(5歳・男の子)
〈事例6〉わがまま、駄々をこねるなど、言い出したらきかない(5歳・男の子)
〈事例7〉集団の中で落ち着いてじっとしていられない(6歳・男の子)
〈事例8〉虫や花にあたる(6歳・男の子)

(3)静かに荒れる子
・静かな「荒れ」行動は、内側へのストレスの抑え込み行動

(4)静かな「荒れ」行動の意味
〈事例1〉つめかみ、指しゃぶりをする(3歳・女の子)
〈事例2〉うそをつく、しゃべり続ける(5歳・女の子)
〈事例3〉しゃべらない、学校で何も話さない(6歳・女の子)
〈事例4〉臆病、怖がり(6歳・男の子)
〈事例5〉学校と家での様子が違う(7歳・女の子)
〈事例6〉無気力、無表情で活発さがない(7歳・男の子)

【第2章】荒れている子どもの心を理解する
(1)子どもを荒らすストレス環境に注意 
・習い事、塾通い、成績重視ストレス
・ゲームやテレビなどのメディア漬けストレス
・夜更かし環境のストレス
・体を思い切り使う遊び場が減ったストレス
・親の忙しさやストレスによるストレス

(2)親に気をつかう「いい子」に注意
・親の期待に応えようとする子どもたち
・親に指示されないと動けない子どもたち
・自分の「好き」「嫌い」がわからない子どもたち
・自分に責任がもてない子どもたち
・他人に嫉妬する子どもたち

(3)自尊心が低い子に注意
・喜怒哀楽の感情がわからない子どもたち
・自分の気持ちがわからない子どもたち
・失敗することに耐えられない子どもたち
・チャレンジする自信と勇気がない子どもたち

(4)子どもの心の「荒れ」に気づくことが第一歩
・子どもの気になる行動に気づいていますか?
・子どもの感情、気持ちに気づいていますか?
・親子関係の変化に気づいていますか?
・ありのままの子どもを受けとめていますか?

【第3章】子どもの心を荒らす子育て
(1)やってはいけない「叱り方」
・クドクド・ネチネチ叱る
・両親がいっしょになって叱る
・感情に巻き込まれて叱る
・叱るポイントがコロコロ変わる
・「それに比べてあなたは」と比較して叱る
・「何でそんなことをしたの?」「何でできないの?」などの尋問調で叱る
・「だからあなたはだめなのよ」と否定して叱る
・「そんな失敗、あなたらしくないわよ!」と過剰な期待をこめて叱る
・動機を無視して「失敗」という結果を責めて叱る
・あとになってから叱る

(2)やってはいけない「ほめ方」
・ほかの子と比較してほめる
・動機やプロセスは無視して、成功した結果のみをほめる
・今ほめずに、あとでほめる
・ほめながらも、「次はもっと頑張ろう」と次の目標を求める
・ほめながらも、評論家的に不満な点をつけ加える
・過度にほめる

(3)やってはいけない「接し方」
・あいさつをしない
・子どもの話を聞かない
・突き放した態度をとる
・体罰をする
・お金やおもちゃなど、物で釣る
・落ち込んでいる子を無理やり励ます
・子どもが夢中になっていることを否定する
・お母さんのイライラをぶつける
・親の理想を押しつける
・世間体を気にして、善し悪しの基準がぶれる

【第4章】子どもの心を整える子育て
(1)子どもの発達段階に合わせた子育て
・成長に合わせた子育てが、心を整える鍵
・子育てに終わりはないし、今からでも遅くない
(2)入園前の子の心理に合わせた子育て
・この時期のこどもの特徴
・叱り方
・ほめ方

(3)園児の心理に合わせた子育て
・この時期の子どもの特徴
・叱り方
・ほめ方
(4)児童期の子の心理に合わせた子育て
・この時期の子どもの特徴
・叱り方
・ほめ方

(5)心が整った子どもの状態
・「母さんに愛されている」という安心感がある
・失敗を振り返って、次への教訓を学ぶ力がある
・新しいことにチャレンジする勇気がある
・自分に自信がある
・明るく素直で元気な子になる

【第5章】子どもの心を整えるお母さんの習慣
・“言葉”にならない“言葉”を読む
・いっしょに過ごす時間をもつ
・「○○でなければならない」に縛られない
・「結果」ではなく「動機」を見る
・いっしょに遊ぶ時間をもつ
・子どもの表情の変化を敏感に感じる
・正論ばかりのお説教をしない
・あれもこれも口出ししない
・「忙しいからあとで」を口ぐせにしない
・子どものペースを認める