人名事典

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加藤典洋

(かとう・のりひろ)
 一九四八年山形県生まれ。東京大学文学部卒業後、国会図書館勤務を経てモントリオール大学東アジア研究所へ。帰国後、明治学院大学助教授を経て明治学院大学教授。

 八五年に出版された処女評論集『アメリカの影』(河出書房新社)では、戦後文学に見られる「アメリカ」の影響の微妙な差異を、村上龍と田中康夫を題材に論じて注目される。また、九四年の『日本という身体』(講談社)では、近代日本の精神史を「大・新・高」という語をキーワードに明確に描いてみせた。

 最近は、太平洋戦争を論じた「敗戦後論」(『群像』九五年一月号)のなかで戦後日本人の戦争観の奇妙な「ねじれ」を指摘。「(まず)日本の三百万の死者の哀悼をつうじて(その上で)アジアの二千人の死者の哀悼にいたる道」は可能かと論じ、左右からの激しい批判を受ける。しかし、九七年、関連論文を納めた単行本『戦後後論』は、類書としては珍しくベストセラーとなった。加藤氏のテーマは一貫して現在の日本をどのように位置づけるかにあり、今後もふたたび戦後日本の解釈をめぐって論争の中心人物となる可能性は高いといえよう。

他の著作に『言語表現法講義』(岩波書店)がある。

(データ作成:1997年)