人名事典

>> 検索トップへ

村上春樹

(むらかみ・はるき)
 一九四九年京都府生れ。早稲田大学文学部演劇科卒。

 現代日本の、方向性のない空漠とした雰囲気を、作品に見事に定着させてきた。作品に登場する主人公の多くは、マージナルで位置づけのはっきりしない人物であり、たいがいは何かを求めて放浪することになるが、その何かには到達できない。この方向感覚の喪失を描いて臨界にまでいったのが最近の『ねじまき鳥クロニクル』(新潮社、94年)だった。方向感覚の喪失は「歴史の喪失」としばしば指摘されてきたが、最新作においても「歴史に回帰することを拒んだ」ことを逆に評価する論者もいる。現代アメリカ文学の翻訳ものを思わせる独特の文体で書かれた『風の歌を聴け』(79年)で群像新人賞を受賞して登場。作品はきわめて抽象的な問題設定がされるにもかかわらず、書けば、必ずベストセラーになるといわれる。『ノルウェイの森』(講談社、87年)は驚異的なミリオンセラーとなった。

 著書に『羊をめぐる冒険』(講談社、82年)などがある。

(データ作成:1998年)