人名事典

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中沢新一

(なかざわ・しんいち)
 一九五○年山梨県生れ。東京大学大学院人文科学研究科宗教学専攻修士課程修了。東京外語大A・A研助手を経て、中央大学教授に至る。

 ニューアカデミズムの中心的人物。ポスト構造主義の現代思想とチベット密教、さらには記号論や素粒子理論なども援用しながら、人間の霊性を探って「野ウサギの走り」を見せてきた。九五年、オウム問題をめぐって論壇の矢面に立つ。初期の代表作『虹の階梯』(平河出版社、81年)がチベット密教修行の詳細な解説書としてオウム真理教に重大な影響を与えたこと、麻原彰晃を「タントラ仏教の本質を非常に正確に理解している」と高く評価してきたこと、そしてオウムへの強制捜査が開始されるや一転、自己保身的言説が多くなったことが理由だった。

 かつて中沢氏を東大教授に推薦して受け入れられず辞職した経緯をもつ西部邁氏は、こう批判した。「犯罪は擁護できないというのは、じつは信仰には何も関心がなかったということです」。自らも「宗教学者・中沢新一は死んだ」と宣言した。

 著書に『純粋な自然の贈与』(せりか書房、96年)、『それでも心を癒したい人のための精神世界ブックガイド』(共著、太田出版、95年)。

(データ作成:1998年)