人名事典

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中野孝次

(なかの・こうじ)
 一九二五年千葉県生れ。東京大学文学部独文科卒。元国学院大学教授。

 ドイツ文学の翻訳・評論をはじめ、自伝小説にエッセイ、日本古典文学の評論と多彩な執筆活動を展開する。旅行先の海外で、「金の話しかしない」「土地の歴史とか文化への関心をほとんど示さない」「自国の歴史についても無知」な日本人について非難を浴びるたびに、西行、兼好、本阿弥光悦、芭蕉などをひいて、「日本文化の精髄だと信じている」“清貧の思想”を語ってきた。それを詳しく展開した九二年著『清貧の思想』(草思社)がベストセラーとなる。「所有に対する欲望を最小限に制限することで、逆に内的自由を飛躍させるという逆説的な考え」が、モノから心へ、と向うバブル崩壊後の日本人の心をとらえた。古典の部分に抵抗のある人は、『生きて今あるということ』(海竜社、93年)を読むとよい。エッセンスが現代の文脈で語られている。

 他の著書に、『ハラスのいた日々』(文春文庫、90年)、『ブリューゲルへの旅』(河出文庫、80年)など。

(データ作成:1998年)