人名事典

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福井謙一

(ふくい・けんいち)
 一九一八年奈良県生れ。京都帝国大学工学部卒。京大教授、同大工学部長、京都工芸繊維大学学長を経て、基礎化学研究所所長。

 五二年に発表した「フロンティア電子理論」など一連の化学反応理論研究で新局面を拓き、八一年に日本初のノーベル化学賞を受賞。物質の構成単位である分子のうち、いちばん外側を回る電子を「フロンティア電子」と名づけ、これが化学反応に最も寄与するという独創的な理論。有機化学の反応論に初めて量子力学を導入、福井氏自身が「大発明と直感した」というほど。典型的な学者肌だが、組織的指導力もある。夜、寝ながら浮かんだアイデアをメモに書きとめ、実験に反映させてきた。梅原猛氏は福井氏を評して「すぐれた自然科学者は科学の限界をよく認識し、科学の未来に警告を発しておられる」と述べた。

 著書に『哲学の創造』(共著、PHP研究所、96年)など。

(データ作成:1997年)