2014年3・4月号 vol.16の読みどころ

 日々の事業活動で絶えず問われる経営判断。“経営の源”となる普遍の経営理念とは何か。『松下幸之助塾』誌は、没後20年以上を経てなお注目を浴びつづける松下幸之助の経営哲学を基軸に、今求められるテーマを最新の事例をもとに検証する隔月刊誌。

3・4月号の特集は「人間大事の経営」。
 松下幸之助は生前、人を何よりも大事にし、社員を育て上げていくことに全力を注いだ。「ものをつくる前に人をつくる」という考え方は、人間大事の経営をすすめた松下の特徴の一つである。また、取引先との共存共栄に腐心したのも、人間大事の一つのあらわれといえよう。
 本特集では、国籍・経営規模・業界を問わず、現代において「人間大事の経営」を追求している経営者たちそれぞれのアプローチを紹介する。
 そのほか、人気モデル押切もえさんが松下幸之助について語るインタビューは見どころ。今回から始まる新連載「家電ブラザーズ――小説・井植歳男と松下幸之助」も、ぜひお読みいただきたい。



【特別インタビュー】

松下幸之助『道をひらく』500万部突破記念
『道をひらく』は私の“心の救急箱”
押切もえ(モデル)
1968年の発刊から46年を経て、昨年累計発行部数が500万部を超えた松下幸之助の代表作『道をひらく』。無類の読書好きとして知られる押切もえ氏は『道をひらく』の愛読者。この本との出合いから心にのこった言葉、自分を励ましてくれた一文などについて語っていただいた。


【特集】

人間大事の経営
《インタビュー》
理屈だけで経営はできない
――松下さんから学んだ“衆知の経営”

野田一夫(一般財団法人日本総合研究所会長)
従業員の人間性を重んじる経営を訴えた人物ピーター・E・ドラッカー、そして松下幸之助。特に松下幸之助とも深い交流を持った野田一夫氏が、ドラッカー、松下幸之助との思い出を語りつつ、人間を大切にしながら健全な経営をはかるために必要な経営者の姿勢を説く。

「怒らない経営」は合理性追求の必然
――宅配寿司「銀のさら」成長の秘密

江見 朗(ライドオン・エクスプレス社長兼CEO)
宅配寿司ナンバー1「銀のさら」を展開するライドオン・エクスプレス。22年前の倒産の危機から貫いてきた経営手法は、「怒らないこと」。「人間はみな平等だと分かっていることが、どんな経営手法を学ぶより大事」という江見社長が確立した人間大事の経営とは。

《企業レポート》
イケアは家具の会社ではなく人をつくる会社
――社員の成長が会社を発展させる

レポート:坂田博史
スウェーデンの小さな村で生まれ、今や世界最大の家具チェーンとなったイケアは、手厚い福利厚生や徹底した人材育成など、社員のモチベーションを高める人事制度で知られる。それらを支える哲学とは、どのようなものか。同社日本法人の人事責任者と社員に話をきいた。

「環境整備」の徹底が社員を変える
――見学希望者が絶えない京都の伝統企業・傳來工房

レポート:森末祐二
芸術性の高いアルミ鋳物で知られ、近年は住宅事業にも進出している傳來工房。しかし、いつしか組合が先鋭化し、社風が悪化。そこで、社長みずから「環境整備」という方法で改革に乗り出した。すると、社員の仕事ぶりや態度が改善し、会社は変身を遂げたという。

《ビジネスエッセイ》
従業員の幸せが顧客と社会の幸せを生む
――米国優良企業が実践する「コア・バリュー経営」

石塚しのぶ(ダイナ・サーチ、インク代表=日米間ビジネス・コンサルタント)
効率重視のイメージがある米国企業の中に、近年、数字ではなく理念や価値観、企業文化を重視することで従業員の満足や一体感を高め、結果として業績を伸ばし、注目を集めているところがあるという。米国の企業通がレポートする、米国流「人間大事の経営」。

<松下幸之助の人間尊重経営>
人材育成は企業の社会的責任である
――人それぞれの天分を生かし、“成功”を後押し

人間のあり方や生きがいといった根本問題まで思索を深めた松下幸之助。なぜ企業において人が重要なのか、人材育成とはそもそも何をすることなのか、なぜ企業がそれを行う必要があるのか――など、松下が考え、実践したことをあらためてふり返る。


【隔号連載】

朝倉千恵子の「社会を変えたい人」列伝
第2回ゲスト 大嶋啓介さん(てっぺん代表取締役)
朝倉千恵子(新規開拓社長)
「本気の朝礼」を通して子どもたちを、企業を、元気にしたい。居酒屋から日本を変えたい――この思いで全国を奔走する居酒屋「てっぺん」代表の大嶋啓介さんは、日本の飲食業界で最も注目を集めるカリスマ経営者である。その熱く燃えるような「情熱の源」に迫るインタビュー。


【特別レポート】

 
タクシー5台で始めた小倉の会社が巨大企業グループに
――黒土始さん(第一交通産業会長)が松下幸之助から学んだ経営の心得

日本一のタクシー保有台数を誇る第一交通産業。創業者で会長の黒土始さんは、経営の困難や迷いに直面するたび、松下幸之助の事業への姿勢を模範にしてきた。松下と言葉を交わしたこともあるという黒土さんは、松下哲学をどのように実践してきたのか。


【シリーズ企画】

一人一業・私の生き方
教育者として70年、貪欲に“学び続ける”人生
山本紹之介さん(学校法人阪急学園理事、元神戸市立中学校校長)
気が弱く、自分に自信を持てなかった青年が、哲人・中村天風や、「全一学」を説く教育者・森信三に出会い、大変身。みずからもまた教育者となって、いまだ現役70年。「傾聴」に徹して非行少年たちを更生させ、「立腰教育」を広めてきた人間教育一筋の人生をふり返る。


【松下幸之助経営塾】

[講義再録]
日本発の共存共栄が世界のスタンダードに
――日本の商人道の原点に学ぶ

平田雅彦(ユニ・チャーム監査役/H.I.S.取締役)
松下幸之助が昭和39年に行なった経営改革を間近で体験。「共存共栄」の信念に立ったその経営のあり方を、みずからが研究する石田梅岩の思想に原点をひもときながら解説。これからのグローバルな時代にこそ、必要な経営思想であることを明確に指摘する。


【松下幸之助経営塾】

[理念継承]わが社の場合(10) ニッコー
「本物の味」「安全な食」を次代に
――ナチュラルな流れで「第二創業」へ向かう品質重視の食品会社

会長  山崎貞雄さん、社長  山崎雅史さん
「産地直送」「無添加」の冷凍食品で健康第一の食を提供する株式会社ニッコー(神奈川県大和市)。近年の食の安全性の揺らぎと自然志向の高まりを受けて、生協や自然食品業者等への販路を広げている。創業から30年、二代目へと受け継がれた事業の方向性を占う。


【松下幸之助経営塾】

[研修の現場から]
女性育成にはトップの意識改革こそ
藤野祐美(Y’sオーダー代表取締役)
日本における女性活躍推進は、まだ緒についたばかり。多くの経営者や経営幹部は、意識はするけれども、何から始めてよいか分からない。研修を通じてさまざまな現場を指導している筆者が、真に女性活躍推進を図るための経営者の意識改革の要点を明かします。




家電ブラザーズ――小説・井植歳男と松下幸之助
第1回
阿部牧郎(作家)
大正6年6月、淡路島からひとり旅立った少年。行き先は、大阪で独立して電気器具製造に乗り出した義兄の家。日本の主婦を家事から解放するため、昭和の日本経済を駆け抜けた伝説の兄弟。企業家精神とパナソニックの原点を見つめなおす爽快な物語が今、スタート!


【新連載】

探訪 松下幸之助歴史館
第1回 歴史を伝える舵輪の館
パナソニックミュージアム 松下幸之助歴史館(大阪府門真市)の魅力を伝える新連載。ここを訪ねれば、事業の歴史に沿いながら、松下幸之助の事績や思想とじかに向き合える。第1回は、プロローグとして、歴史館の生い立ちや館内構成を紹介する。


【新連載】

組織と自分を変えるヒント
レゴブロックに学ぶリーダーシップ
ケン・パールマン(コッター・インターナショナル コンサルタント)
経営コンサルタントのケン・パールマンが、娘たちとレゴブロックで遊んでいて気づいたこと。それは、この遊びを充実したとても楽しいものにすることと、クライアント企業に組織変革の実行をしてもらうことは相通じる、ということだった。異色のビジネスエッセイ!


【好評連載】

ほほえみの国 タイから
第4回 対立しながらも、調和して生きる
プラユキ・ナラテボー(タイ上座仏教僧)
タイで出家した日本人僧による連載の4回目。今回は、昨年亡くなったやなせたかし氏の代表作『アンパンマン』の世界観、人生観と、ブッダの示した仏道という生きざまに共通点を見出し、「敵だけれど味方、味方だけれど敵」という視点を提示する。


【好評連載】

なるほど! 日本経営史講座
第7講 不撓不屈の人々――日本の企業者活動の源泉
由井常彦(三井文庫常務理事・文庫長)
近江商人にならった安田善次郎、三井三池を率いた團琢磨、タイヤ事業で成功した石橋正二郎、逆境からはい上がった堤康次郎、行商で鍛えられた伊藤忠兵衛――成功に安住することなくさらに困難に立ち向かい、リスクを顧みずにエネルギーを注ぎ続けた日本の企業家たちの足跡をたどる。


【好評連載】

現代に生きる中国古典
No.9 『孫子』(2) ――戦略はロジカルに構築されている
守屋 淳(中国文学者)
ロジカルで徹底した合理性を有する『孫子』。だからこそ時代を超えた普遍性がある。それは現状認識に対して何よりも深い洞察をしているからだ。たくさんのライバルの中で、また、やり直しのきかない逼迫した中で、どうすればよいかを追求するその思想に迫る。


【好評連載】

鍵山秀三郎の「ビジネス幸福論」
その13 社員間競争をさせてはならない
鍵山秀三郎(「日本を美しくする会」相談役)
いつのまに、日本人は他人との比較にこだわるようになったのか。勝つことにこだわる欧米型の教育を是とするのではなく、余裕があり、精神性の高い日本人らしい教育を取り戻すことこそ大切だ――。社員の心根を見つめて小さな努力を積み重ねる重要性を説く。


【好評連載】

松下幸之助の経営問答
第15回 個人か、組織か
数々の講演後に受けた質問に対して、松下幸之助が真摯に答えた貴重な問答の記録。経営者たちの切実な悩みに、松下が経営の真髄を語りかける。今回は、組織を強くし繁栄させるには、組織のために個人を犠牲にするのではなく、いかなる場合でも人間第一に徹しなければならないと指摘する。