2014年7・8月号 vol.18の読みどころ

 日々の事業活動で絶えず問われる経営判断。“経営の源”となる普遍の経営理念とは何か。『松下幸之助塾』誌は、没後20年以上を経てなお注目を浴びつづける松下幸之助の経営哲学を基軸に、今求められるテーマを最新の事例をもとに検証する隔月刊誌。

 7・8月号の特集は「理念をきわめる」。
 経営理念なくしては、真に力強い事業活動の推進はむずかしい。では、理念があればそれが可能かといえば、必ずしもそうともいえない。高尚な理念がただの「絵に描いた餅」になっている例はたくさんあろう。理念に命を吹き込み、社員のモチベーションの向上と事業の発展に結びつけるためには、理念が社員に深く理解され、体にしみこむまでに「きわめる」ことが必要ではないか。
 こうした問題意識に立った本特集では、会社として、また社員一人ひとりが企業理念を「我がもの」とするための考え方と方法を探った。
 そのほか、世界的経営学者である野中郁次郎氏の松下幸之助論や、京都に拠点を置く計測機器の世界的企業である堀場製作所の人財論なども、ぜひお読みいただきたい。



【特別企画】

松下幸之助と私
「実践知リーダー」のベストモデル
――松下幸之助『実践経営哲学/経営のコツここなりと気づいた価値は百万両』を読む

野中郁次郎(一橋大学名誉教授)
「これまでも素晴らしい経営者を数多く見てきたが、なかでも幸之助さんは飛び抜けている」――世界的経営者がこう言い切る論拠は何か。野中氏が、みずからが提唱する「実践知リーダーシップ 6つの能力」の一つひとつについて、松下幸之助をあてはめ検証する。


【特集】

理念をきわめる
《トップインタビュー》
「自律型感動人間」がお客様を引き寄せる
――IT化と人間力重視の理念経営を両立し躍進

山本梁介(スーパーホテル会長)
1泊朝食付き5,120円からという低価格ながら質の高い宿泊サービスが評判のスーパーホテル。平均稼働率9割、顧客リピート率7割を誇るという。人気の背景には、IT導入による利便性向上に加え、理念を徹底的に身につけた「自律型感動人間」の育成があった。

《トップインタビュー》
花外楼は「誠実」に始まり「誠実」に還る
――歴史が紡いだ精神性こそよりどころ

徳光正子(花外楼五代目女将)
明治初期、大久保利通ら明治の元勲が集い、日本近代化の大きなターニングポイントとなった「大阪会議」。その会場となったのが、大阪・北浜の日本料理店「花外楼」だ。「老舗中の老舗」で、経営理念は、店の顔である女将にどう受け継がれ、息づいてきたのか。

《レポート》
「竹中らしさ」は寮で育まれる
――いつのまにか理念が身につく竹中工務店の全寮制新人教育

高野朋美(ライター)
創業400年を超える老舗ゼネコン大手の竹中工務店。ここに入社した新人社員を待つのは、1年間の寮生活だ。朝晩を共にし、同じ釜の飯を食う日々の中で、同社の経営理念をその身に刻むという。寮長・副寮長の経験もある若手社員らへの取材をもとにレポートする。

《レポート》
体で理解する経営理念
――クリエイションとアウトドア・エデュケーションセンターがめざす新しい研修のかたち

加賀谷貢樹(ライター)
「野外で体を動かしながら経営理念の理解を深める研修を行うので、運動のできる服装で来てください」――何のことか分からないまま参加したある研修だが、始まってみると驚きの連続! 既成概念を打ち破られ、目から鱗の発見に満ちた充実と興奮の研修だった。

《レポート》
SJクラブ――合同研修で培われる「気づきの心」と「美しい社風」
システムジャパン亀井民治社長の挑戦

若林邦秀(ライター)
鍵山秀三郎氏(イエローハット創業者、日本を美しくする会相談役)の「掃除道」を根底に、「SJクラブ」という企業の共同研修のグループを開発・組織し、企業内での「掃除道」の定着を目指してきた亀井民治氏のこれまでの足跡と、その取り組みを取材した。

《論考》
「商道」教育の道場を訪ねて
――松下幸之助商学院に生きる「物をつくる前に人をつくる」理念

三井 泉(日本大学経済学部教授)
朝6時前の起床から夜10時半の就寝まで全員が分刻みで行動する、約1年の全寮制教育――パナソニックが系列販売店の経営者子弟育成のために40年以上前に設置した“学校”が守る伝統である。経営理念の継承に詳しい経営学者が、「商道」教育の理念と実践を報告。


【隔号企画】

朝倉千恵子の「社会を変えたい」人列伝
第3回ゲスト 西田文郎さん
「知・徳・胆」を備えた経営者を育てたい

朝倉千恵子(新規開拓社長)
情熱研修講師で知られる朝倉千恵子氏が“スジの通った活動家”に斬り込むインタビュー・シリーズ。今回は、多くのトップアスリートの指導で知られ、各界のリーダーから「能力開発の魔術師」として尊敬を集める西田文郎氏に、経営者育成にかける現在の思いをきく。


【松下幸之助経営塾】

[講義再録]
人財なくして会社の成長はありえない
――人のチェーンに支えられるわれらがホリバリアン

堀場 厚(堀場製作所会長兼社長)
「おもしろおかしく」を経営理念にグローバル展開中の堀場製作所。その活気の根底は徹底した、人を人財にするまでのこだわり、すなわち教育システムにある。自慢の研修施設への思い入れとそのユニークな活用法を組織を率いるトップリーダーが語る。


【松下幸之助経営塾】

[理念継承]わが社の場合(12) 日辰
蕎麦店への卸を超え店舗経営サポートも
――「商いは生きもの」の精神で顧客ニーズの一歩先を行く

会長  梅原清辰さん、社長  梅原清幹さん
関東地方全域で蕎麦店を中心に業務用の食品・食材を卸販売している日辰。創業者の梅原清辰さんは、昭和30年代に米子から裸一貫で上京し、苦労の末、現在の日辰を築いた。3年前に2代目を継承した長男の清幹さんは、どんな次世代の花を咲かせるのだろうか。


【好評連載】

家電ブラザーズ――小説・井植歳男と松下幸之助
第3回
阿部牧郎(作家)
東京で自分の才覚を磨き続ける井植歳男。そこへ突如起こった関東大震災。修羅場をくぐり抜け、帰郷した彼を次に待ち受けていたのは徴兵検査だった。兄弟それぞれが成長を自覚する中で、戦争は確実に歳男と事業拡大を図る松下幸之助に忍び寄りつつあった。