2014年9・10月号 vol.19の読みどころ

 日々の事業活動で絶えず問われる経営判断。“経営の源”となる普遍の経営理念とは何か。『松下幸之助塾』誌は、没後20年以上を経てなお注目を浴びつづける松下幸之助の経営哲学を基軸に、今求められるテーマを最新の事例をもとに検証する隔月刊誌。

 9・10月号の特集は「歓喜の経営を生みだす」。
 仕事の場が歓喜で沸きかえる。あるいは、歓喜とまではいかなくても、仕事の充実を味わえる。これがどれほど大事なことか。人生において相当の比重を占める仕事の時間を、明日の生活費を稼ぐための単なる「労働(labor)」ではなく、意義ある「仕事(work)」と心得、ひいては「遊び(play)」にまで昇華させることができれば、すばらしい成果を生む組織が誕生するのではないか。
 こうした問題意識に立った本特集では、従業員が仕事の上で歓喜を味わえるようにするための考え方と、企業での実践を探った。
 そのほか、クロネコヤマトの経営理念とからめて語った瀬戸薫氏の松下幸之助論や、ある僧侶との出会いによって素直な生き方にめざめた男性の自己修養の姿を描いたヒューマンドキュメント「一人一業」なども、ぜひお読みいただきたい。



【特別企画】

松下幸之助と私
経営者になったつもりで仕事をしよう
――松下幸之助『社員稼業』を読む

瀬戸 薫(ヤマトホールディングス会長)
「クロネコヤマトの宅急便」の生みの親である小倉康臣氏が唱え、今に至るまでヤマトグループ社員が大切にする「全員経営」の思想と実践は、松下幸之助が唱えた「社員稼業」の考え方と合致する――ヤマトの現役会長が、同社に息づくDNAと重ねあわせて語る。


【特集】

歓喜の経営を生みだす
使命感が働く喜びを生む
――社員の心に火をつけるのはトップの姿勢次第

和地 孝(テルモ元会長・人づくり経営研究会代表)
医療機器・医薬品の製造・販売会社テルモの社長に就任後、「人は、コストでなく資産である」という信念から4000人を超える社員一人ひとりと対話するためにみずから全国を回るなど、社員のやる気を高めるために努力し、同社の成長力を高めた経験を語る。

お客さまの感動こそ私たちの喜び
――理念の血肉化が社員を幸せにし会社を強くする

金子和斗志(アイ・ケイ・ケイ社長)
「働きがいのある会社」ランキング(GPTWジャパン)で今年度上位にランクされたアイ・ケイ・ケイは、ホスピタリティの精神にあふれる仕事で顧客の評価を高め、不況下でも毎年売上を伸ばす。社員の高いモチベーションと成長意欲を支える秘密に迫った。

「ちょっとアホ」実践で活気も業績も蘇る
――無条件に人を受容する姿勢が根底に

出路雅明(ヒューマンフォーラム会長)
カジュアルウェアショップ「スピンズ」の成功で知られるカリスマ経営者が、かつて経営に行き詰まって苦悩するなか、「ちょっとアホ」という考え方にたどり着いたことで、自分の弱みや苦しみをさらけ出すようになった一方、社員間にも楽しさが生まれてきたという。

「大失敗賞」が社員の奮起を促す
――縁の下の力持ちにも光を当てる太陽パーツの表彰制度

城岡陽志(太陽パーツ社長)
表彰というと、優秀な成績をあげた社員をたたえるイメージがある。しかし、加工から製品開発まで行う異色の機械部品メーカー、太陽パーツは違う。挑戦の結果として大損害を与えた社員を表彰することで、再起を促すとともに、沈んだ社の雰囲気を一掃するという。

熱狂するチームのつくり方
――年4回の全員面談で語り続けていること

近田哲昌(サイバー・バズ取締役)
インターネット業界の先頭を走り、高い営業目標を持つサイバーエージェント。同社でかつて自分が率いるチームのメンバーを熱狂の渦に巻き込み、11カ月連続で受注総額・粗利目標ダブル達成という圧倒的実績を残した近田哲昌氏が、「熱狂の起こし方」を熱く語る。

「承認の欲求」を満たす組織をつくれ
――人間の心のメカニズムに即した経営システムとは

太田 肇(同志社大学教授)
むしろ実力や功績を認めて「ほめる」、もしくはその存在を「承認する」こと、そうすれば多くの人間のモチベーションは高められる。組織と個人の関係性研究の権威、太田肇教授が説く、多様化の時代にふさわしい個人を生かす組織づくり・制度づくりの要点。

《レポート》理念に共感、店員たちが熱狂した現場
中央電気倶楽部大ホール
――昭和7年5月5日――松下電器 伝説の第一回創業記念式典

本誌編集部
80年ほど前、松下幸之助が自分たちの事業の真使命を感得し、社員たちに訴えたとき、その場所で起きたこととは――。理念や志こそ社員を熱狂させる力があることを立証した“歓喜の経営を生みだした”一つの現場・中央電気倶楽部大ホールを訪ねる写真紀行。


【松下幸之助経営塾】

[講義再録]
伝えろ。伝えろ。伝えろ。
――会社経営の要諦は豊富なコミュニケーション

藤巻幸大(故人・参議院議員、シカタ エグゼクティブプロデューサー)
伊勢丹のカリスマ・バイヤーとして知られた藤巻氏。福助の再建に成功し、その活躍の場を国政にも生かすに至った。組織の立て直しに必要なのはコミュニケーションであるとの持論を、豊富な事例とともに語っていただいた、急逝直前の貴重な講義録!


【松下幸之助経営塾】

[理念継承]わが社の場合(13)ナカリングループ
商法は日々新たなり 商道は不変なり
――お客様・会社・社員が等しく喜び満足する経営を追求

創業者・グループ代表  中嶌武夫さん
メルセデス・ベンツ中央社長  中嶌秀高さん
港三菱自動車販売社長  中嶌高虎さん

お客様のご満足、会社の発展、社員の幸福――。これらすべての実現を、自転車店を営んでいた50年以上前から追求し続け、高級車メルセデス・ベンツのディーラーとして日本一と評価されるに至った経営者がいる。その後継者も交え、商売哲学について話を聞いた。


【シリーズ】

一人一業・私の生き方
素直に生きる ――雲水との出会いが変えた人生
池田繁美さん(池田ビジネス社長・素心学塾塾長)
「人は一生のうちで会うべき人には必ず会う。一瞬たりとも早からず、遅からず」。大切なことは、その機会を逃さずつかむことである。苦学を続け税理士をめざす若きビジネスマンの前に現れた一人の雲水。人との出会いが成功を切り拓いた希有の真実とは――。


【好評連載】

家電ブラザーズ――小説・井植歳男と松下幸之助
第4回
阿部牧郎(作家)
重砲兵連隊に入営した井植歳男。新兵いじめに耐えながら、旅順に移った。その街なかの小さなたばこ屋の店頭にすわる看板娘、通称「旅順小町」。厳しい軍での生活の一方で、ほのかな思いを募らせた歳男は、結婚を考えるまでに小町とその両親に近づいていくが――。