読者の広場 [PHPほんとうの時代 2012年12月号]

新聞紙上で見た一句に心が揺れた

工藤国和

 定年退職後、新聞を丁寧に読むようになった。これまで目を止めることのなかった短歌・俳句欄も、じっくりと読む。
 短歌はそうでもないが、俳句のほうは「いいな」と思う句や、「この心境、よくわかるなあ」といったものも多い。そんな作品の中でも、とくに気に入ったものは、ノートに書き写すようにしている。
 今日も入選句を丹念に見ていった。全国各地から応募し、採用された句は、さすが秀作揃い。その中から「南瓜咲く山家に昼のラジオかな」をノートに転記した。情景が鮮やかに目に浮かぶ句だ。
 さらに読みすすむと「色白の妻が日傘に隠れけり」という句があった。日傘の中の老妻? を見る目が、なんとも温かい。選者評には、「妻は色白の美人……」とある。いいなあと、色の浅黒いわが妻をつい連想してしまった。
 そう思いながら「長岡京市」という住所と氏名を見て、アレ?と思った。長岡京市といえば京都府。作者名も珍しい名字で、学生時代の友人と同姓同名だ。
 彼の結婚式にも出席した。新婦は驚くばかりの色白で、京美人などといわれていた。その後彼とは、ちょっとしたいさかいがあって以来疎遠となり、年賀状さえ交換していない。
 俳句欄を見つめていても、友人なのかどうか、確信はない。別人かもしれない。そう思いながらも、もう一度「色白の……」と音読してみた。日傘をさした色白の奥さんと並んで歩く、若いころの友人の顔が思い出された。

(山形県・60歳・無職)


[編]短歌や俳句の中にも、物語が詰まっています。古い友人とこんな形で再会するなんて、素敵な体験をされましたね。


自分のフィールドで金メダルを目指そう!

末木紳也

 ロンドンパラリンピックが開催された。競技は、運動機能障害、視覚障害、知的障害など各々のクラスに分かれて争われた。柔道、視覚障害部門は正木選手が、女子ゴールボールは白熱した試合のうえ、金メダルを取った。巧みな戦いぶりや、冷静沈着な試合運びには感動を覚えた。メダルを取った選手は見事だが、メダルを取れなかった選手も、失った機能を他の機能で補い、精一杯戦っている姿は私たちが見ても胸を打つ。
 また、健常者の世界でも、私は参考になることは随分あると感じた。要は、人は誰でも自分しかできないことや、自分の世界で一番を目指せばよいと思う。自分の目指す金メダルは誰にでもあるし、もしその世界を極めれば、それが自分自身への最高の誉れだと思う。
 私も、改めて自分自身がやらなければならないことや使命を感じた。今後は、自分のフィールドで金メダルを目指そうと誓った。金メダルが私のこれからの夢である。

(神奈川県・52歳・自営業)

[編]オリンピックと違った感動があるパラリンピック。もっとマスコミでも取り上げてほしい、と思うのは私だけでしょうか?


育てさせてもらってほんとうにありがとう!

西村美津代

「もうすぐお父さんの60歳の誕生日なので、3人の子どもで還暦のお祝いに旅行でもプレゼントしたいと思っているのだけれど、お母さん、どこか行ってみたいところある? 海外でもどこでもいいんだけれど」
 ある日、末っ子の次男から思いがけない電話があり驚いた。さっそく夫に伝えると、「嬉しいな。北海道の富良野に、ちょうどこれからがベストシーズンだというラベンダーを見に行きたい」と言う。たっての希望により、四泊五日の北海道へと、行き先は決まった。出発は連休前の7月13日。わずか三週間余りで出発するという慌ただしさも、飛行に乗ったら吹き飛んだ。定山渓~富良野~十勝~知床~網走を車で走り、各地の温泉を巡る二人だけの旅だ。
 北の大地に着いた初日、のんびりと温かい温泉につかり、美味しい夕食をいただいた。旅で疲れた体を横にしていたら、あとからあとから涙が流れてきて、私はいつしか夫の胸の中で泣いていた。
「3人の子どもたちの心づかいが嬉しくて、もったいなくて……」と言う私に、「ありがたいね。これも3人の子どもたちのお陰だね」と返す夫も、それ以上言葉にはならなかった。
「たまには贅沢をしてきてください」と二人分の小遣いまで工面してくれたのは、言葉少なの、赤ちゃんのころから一番手のかかった長男であった。
 翌日訪れた富良野の広大な丘陵地は、紫のラベンダーに赤や黄色の花々が映え、まさにベストシーズンを迎えていた。さっそくその美しさを切り取った絵葉書に感謝の思いを綴って、子どもたちの元に送った。
“あなたたち3人を育てさせてもらって、ほんとうによかった。素敵なプレゼントをありがとう”
 結婚して32年。生涯、忘れられない夏になった。

(福井県・56歳・自営業)

[編]こんなお子さまがいらっしゃるなんて、うらやましい限り。最高の思い出ができましたね。満開の花畑を見ることができたのも、ほんとうにラッキーでしたね。