3つのポイントで理解!

松下幸之助の代表的著作の一つ『実践経営哲学』から、松下が重んじた経営の心得を学んでいきましょう。 第2回のテーマは、自然の理法について。


業績で悩んでいる経営者の方は多いのではないでしょうか。 松下幸之助によると、経営とは本来、成功するもの。 むずかしく考えず、自然の理法に従ってなすべきことをきちんと実践していれば、経営はうまくいくといいます。

ポイント1


経営の秘訣は、雨が降れば傘をさすように当然のことを当然に行う、つまり"天地自然の理法"に従うことです。

 経営というものはまことにむずかしい。いろいろな問題がつぎからつぎへと起こってきて、それに的確に対処していかなくてはならない。(中略)しかしまた、考えようによっては、経営はきわめてやさしいともいえる。というのは、それは本来成功するようにできていると考えられるからである。

 私は自分の経営の秘訣というようなことについて質問を受けることがあるが、そういうときに「別にこれといったものはないが、強いていえば"天地自然の理法"に従って仕事をしていることだ」という意味のことを答える場合がある。

 天地自然の理法に従った経営などというと、いかにもむずかしそうだが、たとえていえば「雨が降れば傘をさす」というようなことである。雨が降ってきたら傘をさすというのは、だれでもやっているきわめて当然なことである。もしも、雨が降ってきても傘をささなければぬれてしまう。これまた当然のことである。

 そのように当然のことを当然にやっていくというのが私の経営についての行き方、考え方である。

ポイント2

たとえば、いい製品・サービスを、原価に適正な利益を加えた値段で販売し、集金を厳格に行うのが"天地自然の理法"に従った経営です。なすべきことをすればいいのです。

 雨が降れば傘をさすというのはだれでも分かることだが、これが経営とか商売になると、いささか分かりにくくなってくる。

 分かりやすい例でいえば、100円の原価のものを110円で売るということである。100円のものを100円で売れば、利益がないから商売にならない。だから、100円の原価のものは110円で売る。あるいは120円が社会的に見て適正、妥当な値段だと考えられる場合には、120円で売るということになる。それが天地自然の理にかなった経営の行き方である。

 さらにいえば、それを売るだけではいけない。売ったならば、必ず代金をもらわなければいけない。集金をしなければならない。これまた当然のことである。

 そのように、私のいう"天地自然の理に従った経営"というのは、当然なすべきことをなすということである。それに尽きるといってもいいかもしれない。その、なすべきことをキチンとなしていれば、経営というものは必ずうまくいくものである。その意味では、経営はきわめて簡単なのである。

 いい製品をつくって、それを適正な利益を取って販売し、集金を厳格にやる。そういうことをそのとおりやればいいわけである。

ポイント3

経営の失敗は、"天地自然の理法"に反することから生じます。いろいろな理屈をつけて奇策に走り、当然やるべきことを怠るのが原因です。

 実際の経営となると、そのとおりやらない場合も出てくる。いい製品をつくらないというのは論外としても、宣伝のためとかいろいろ理屈をつけて、100円のものを90円で売るようなことをする。自分も損をし、他人にも迷惑をかける。

 あるいは、適正な値段で売っても、集金を怠る。それで、物は売れても代金が入らず、黒字倒産するというような結果を生んでいる。そういう例が世間には実際少なくない。要するに、なすべきことをなしていない姿であり、それはすなわち、天地自然の理に反した姿である。経営の失敗というのは、すべてそういうところから生じているといってもいいであろう。

自社の製品やサービスの質に問題はないか、過当競争に巻き込まれて過度の安売りをしていないか、売りっ放しで代金回収を怠っていないか、経営の基本を忘れないことが大切です。


松下幸之助とPHP研究所

PHP研究所は、パナソニック株式会社の創業者である松下幸之助が昭和21年に創設いたしました。 PHPとは、『Peace and Happiness through Prosperity』の頭文字で、「物心両面の調和ある豊かさによって平和と幸福をもたらそう」という意味です。

■月刊誌「PHP」

お互いが身も心も豊かになって、平和で幸福な生活を送るため、それぞれの"知恵や体験を寄せ合う場"として昭和22年から70余年にわたり発刊を続け、おかげさまで多くのご支持をいただいています。

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3つのポイントで理解!松下幸之助『実践経営哲学』に学ぶ  
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 (1)まず経営理念を確立すること  : 事業経営でいちばん大切な事とは...?