3つのポイントで理解!
松下幸之助の代表的著作の一つ『実践経営哲学』から、松下が重んじた経営の心得を学んでいきましょう。 第8回のテーマは、素直な心になること。
『実践経営哲学』の最後のセクションは“素直な心”がテーマです。前回までご紹介したもろもろのテーマの根本が“素直な心”にあるからです。なぜそれほど重要なのか、松下幸之助の文章から学んでいきましょう。
ポイント1
経営者にとって最も大切な心がまえは素直な心、すなわちとらわれない心、物事をありのままに見ようとする心になることです。素直な心をもつことで、真実の姿、物事の実相を正しくとらえることができます。
経営者が経営を進めていく上での心がまえとして大切なことはいろいろあるが、いちばん根本になるものとして、私自身が考え、努めているのは素直な心ということである。(中略)
素直な心とは、いいかえれば、とらわれない心である。自分の利害とか感情、知識や先入観などにとらわれずに、物事をありのままに見ようとする心である。人間は心にとらわれがあると、物事をありのままに見ることができない。たとえていえば、色がついたり、ゆがんだレンズを通して、何かを見るようなものである。(中略)
それに対して、素直な心は、そうした色やゆがみのないレンズで見るようなもので、白いものは白く、まっすぐなものはまっすぐに、あるがままに見ることのできる心である。だから真実の姿、物事の実相を知ることができる。そういう心でものを見、事を行なっていけば、どういう場合でも、比較的過ちの少ない姿でやっていくことができる。
ポイント2
素直な心は人を強く、正しく、聡明にします。経営者は、天地自然の理に従い、衆知を集め、すべてを生かし、日に新たな経営が生み出しやすくなります。
経営というのは、天地自然の理に従い、世間、大衆の声を聞き、社内の衆知を集めて、なすべきことを行なっていけば、必ず成功するものである。その意味では必ずしもむずかしいことではない。(中略)素直な心になれば、物事の実相が見える。それにもとづいて、何をなすべきか、何をなさざるべきかということも分かってくる。なすべきを行い、なすべからざるを行わない真の勇気もそこから湧いてくる。
さらには、寛容の心、慈悲の心というものも生まれて、だから人も物もいっさいを生かすような経営ができてくる。また、どんな情勢の変化に対しても、柔軟に、融通無碍に順応同化し、日に新たな経営も生み出しやすい。
ひと言でいえば、素直な心はその人を強く、正しく、聡明にするのである。強さ、正しさ、聡明さの極致はいわば神であるともいえよう。だから、人間は神ではないけれども、素直な心が高まってくれば、それだけ神に近づくことができるとも考えられる。したがって、何をやっても成功するということになる。経営においても然りである。
ポイント3
碁を1万回打てば初段の強さになると言われるように、1万日、素直な心になろうと強く願えば、素直な心の初段になるはずです。そのような心がけなくして、経営の成功も、人生の幸せもあり得ないでしょう。
どうすれば、素直な心を養い高めていくことができるのか。(中略)聞くところによると、碁というものは特別に先生について指導を受けたりしなくとも、およそ1万回打てば初段ぐらいの強さになれるのだという。だから素直な心になりたいということを強く心に願って、毎日をそういう気持ちで過ごせば、1万日すなわち約30年で素直な心の初段にはなれるのではないかと考えるのである。初段ともなれば、一応事にあたってある程度素直な心が働き、大きな過ちをおかすことは避けられるようになるだろう。そう考えて、私自身は日々それを心がけ、また自分の言動を反省して、少しでも素直な心を養い高めていこうとしているのである。
そのように方法はみずから是と思われるものを求めたらよいわけだが、素直な心の涵養、向上ということ自体は、あらゆる経営者、さらには、すべての人が心がけていくべき、きわめて大切なものである。それなくして、経営の真の成功も、人生の真の幸せもあり得ないといってもいい。
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PHP研究所は、パナソニック株式会社の創業者である松下幸之助が昭和21年に創設いたしました。 PHPとは、『Peace and Happiness through Prosperity』の頭文字で、「物心両面の調和ある豊かさによって平和と幸福をもたらそう」という意味です。
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3つのポイントで理解!松下幸之助『実践経営哲学』に学ぶ
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(2)自然の理法に従うこと : 雨が降れば傘をさす...!?
(3)利益は報酬であること : 利益の確保は企業の社会的責任!
(4)必ず成功すると考えること : 正しい考え、やり方なら百戦して百勝する!
(5)人をつくること : 事業は人なり!人材育成の心得とは?
(6)衆知を集めること : 衆知を集めた全員経営
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