高千穂幻想
発売日
1999年09月20日
判 型
新書判
ISBN
978-4-569-60810-5

高千穂幻想
「国家」を背負った風景

著者 千田 稔著 《国際日本文化研究センター教授》
主な著作 『王権の海』(角川選書)
税込価格 723円(本体価格657円)
内容 記紀に<天孫降臨の地>と記される高千穂。神話が現実の場におきかえられようとする時何が起こるのか? 近代日本の<国家の風景>を描く。



 『古事記』『日本書紀』で天孫降臨の舞台として語られる高千穂。神話の高千穂では実際の「どこ」がイメージされていたのかは、江戸時代以来、多くの学者により論争されてきた。そして、明治維新以降、国家主義的気運の高まりの中で、さまざまな思惑から、「神話的空間」を実在の地名に「現実化」しようとして奔走する人々が現れた。 宮崎県と鹿児島県の対立。紀元前2600年を記念した文部省の聖蹟調査、そして宮崎県の「八紘一宇基柱」の建設。そして敗戦。「国家の始原」という「幻想」に駆り立てられた人々は、その必然の成り行きとして「幻滅」し、その結果、戦後の日本においては、高千穂の「物語」は語られなくなった、と著者は論ずる。 本書は、前著『王権の海』(角川選書)で、古代日本の形成過程と高千穂の関わりを読み解いた著者が、近代日本の国家主義の象徴的風景として高千穂像を、歴史地理学における風景論の立場から、描き出す。