女性の階級
発売日
2024年04月15日
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判 型
新書判
ISBN
978-4-569-85685-8

女性の階級

著者 橋本 健二著 《早稲田大学人間科学学術院教授》
主な著作 『東京23区×格差と階級』(中公新書ラクレ)
税込価格 1,265円(本体価格1,150円)
内容 専業主婦は最悪のリスキービジネス……日本のシングルマザーの貧困率はOECD38か国で最悪。女性の間での格差と階級を問う。



 男性よりも大きく深刻な女性間の格差

 男性の間の格差は、もっぱら本人の所属する階級によって決定される。なぜならほとんどの男性は、その生涯の大部分にわたって職業をもち続け、したがっていずれかの階級に所属し続けるからである。

 これに対して女性の間の格差は、男性の間の格差よりもはるかに複雑である。もちろん女性の間の格差も、本人の所属階級によって決定されてはいる。しかし、それ以外にも重要な要因が三つある。

 まず第一の要因は、職業に就いているかどうかである。多くの女性は、結婚や出産を機に退職して無職になる。無職の女性には所属階級がなく、したがって収入源がない。ここから有職女性との格差が生まれる。

 第二の要因は、配偶者の有無である。一般に男性の場合、結婚によってその所属階級が大きく変化することはない。これに対して女性は、結婚または出産の前後で所属階級が大きく変化することが多い。というのは、仕事を辞めて所属階級を失ったり、あるいは正規雇用から非正規雇用に移行するなどして、より収入の少ない階級に移動することが多いからである。

 そして第三の要因は、配偶者がどの階級に所属しているかである。日本の現状では、結婚後の女性が、高く安定した収入を得ることができる可能性は大きくない。だから夫の収入が重要になるのだが、その収入には所属階級による格差がある。こうして女性の間には、夫の所属階級による格差が生まれる。

 このように男性と女性で格差の構造が違うのは、男性と女性の間に大きな格差があるからであり、男女間の格差がなくなれば違いもなくなるはずである。しかし少なくとも現在の日本では、男性と女性の間に大きな格差がある。だから配偶者の有無とその所属階級は、とくに女性にとって重要な意味をもつのである。

 日本の母子家庭の貧困率は、51.4%。実に、2人に1人が貧困である。多くの女性たちは、正規雇用で就職したあと、結婚・出産を機に退職し、専業主婦やパート主婦になるが、夫との離死別などにより簡単に最下層に転落してしまう。本書では女性にとって大変リスキーな国である日本の実態を、「階級・格差」研究の第一人者がデータを用いて明快に解説する。

 職種、年収、持ち家率、教育費、趣味、支持政党、幸福度、飲酒率、メンタル……54のデータから6階級・20グループを徹底分析!

 格差是正の鍵を握るのは、女性です!