頁数/仕様
176ページ / 縦:21cm 横:14.8cm
初版
2024年4月
在庫
在庫あり

脳科学でわかった
発達障害・グレーゾーンの「子どもの脳」にちゃんと伝わる「声かけ変換」

子どもの脳機能の発達に応じたコミュニケーション術で毎日がラクになる! 脳科学の観点から子どもの「脳」にしっかり伝わる言葉の言い換え方や関わり方を具体的に紹介。
著者(肩書) 青木悠太《あおきクリニック院長》
主な著作
編集等
税込価格 1,540円   (本体価格:1,400円)
対象 一般
頁数/仕様 176ページ / 縦:21cm 横:14.8cm
初版 2024年4月

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「ウチの子って、もしかして発達障害?!」
そんな不安を覚え、この本を手にとられた親御さんが多いと思います。
あるいは、すでにお子さんに発達障害の診断がなされ、今後どのように対応したらよいのか、この子は将来ちゃんと自立できるだろうか……そんなふうに悩んでおられる方も少なくないでしょう。

まずお伝えしたいのは、お子さんに発達障害の特性やグレーゾーンの傾向があったとしても、早い時期にお子さんの特性や傾向を知り、それに応じた適切な対応や療育を行ない、適切な環境を選べば、お子さんはきっと幸せで実りある人生を送ることができるということです。

今思えば私の両親は、かなり早い時期から私の特徴を理解していました。その特徴の中には、今では「発達障害特性」と呼ばれるものも多く含まれますが、その都度適切な対応をしてくれていました。私自身は十代の頃に学校への適応に非常に苦しんだものの、それをきっかけに視野を広げ、自分自身を分析し、自分に合った生き方をすることができるようになりました。
ですから、お子さんの現状と将来を案じておられる親御さんたちに対し、自らの体験も交えながら、「心配しなくても大丈夫ですよ」とお伝えしたく、本書を上梓しました。

発達障害の診断がなされる人は、過去30年の間におよそ50倍も増えています。これは「発達障害そのものが増えた」のではなく、「発達障害と診断される人が増えた」というのが正確な表現です。
発達障害の特性のひとつである「多動」や「不注意」が目立つ子どもがいても、ひと昔前であれば「わんぱくで、ちょっとおっちょこちょいな子」として、周囲も比較的寛容に受け入れていたと思います。
友だち関係が苦手な傾向があっても、マンガを描くのが上手などの特技があれば、自然と周りに人が集まってきて、クラスでも一目置かれるような存在であることもできたと思います。
ところが近年は、「多様性の時代」とは名ばかりで、世の中で求められているのは「忘れものをしない」「コミュ力(コミュニケーション能力)が高い」人たちで、苦手なこと、難しいことがどうしても多くなりがちな発達障害の特性がある人にとっては、「生きづらい」社会となっています。小学生以下のお子さんも、それは例外ではありません。
加えて、「発達障害」という言葉が一般に広く浸透したことも、発達障害と診断される人の増加にさらに拍車をかけています。詳しくは本文に記載させていただきますが、程度の差はあれども、多くの人に発達障害の特性は存在します。
それなのに、その特性と周りの人が求めていることがマッチしないと、表面的な理解で「あの子、発達障害じゃない?」という話になります。そして、周りの人は発達障害についての理解を深めることも対応について学ぶこともなく、お子さんが医療機関の受診を促されることも稀ではありません。
これは単純な多数決の問題で、数が多いほう(定型発達だと思っている人たち)が、数が少ないほうを集団から排除しているという構図なのです。
一方、発達障害の診断がなされて、「気持ちがラクになった」とおっしゃる親御さんも、数多くいらっしゃいます。お子さんの発達障害の特性は、「親の躾が悪いから」という誤解がいまだにありますが、発達障害は生まれ持った脳機能の特性(クセ)であり、躾とは関係がありません。しかし、お子さんが〝生きづらさ〟を克服し、実りある人生にしていくには、親御さんの適切な関わりが欠かせないことも事実です。

発達障害とひと口に言っても一人ひとりに個性があり、診断名だけではお子さんの特性は捉えきれません。発達障害は「社会との摩擦」という面がありますから、発達障害に対して、「医療だけで対応できること」には限界があります。
お子さんのいちばん身近にいる親御さんが主体となり、まずはお子さんの特性やお子さんの生きる社会のニーズをしっかりと理解し、それらに応じた適切な関わりを日常的に行なっていただくことが大切です。
難しいことではありません。日常的な「声かけの仕方」や「関わり方」「見守り方」をほんの少し工夫するだけで大丈夫です。

本書では、発達障害(いわゆるグレーゾーンも含みます)のお子さんの脳の中で起こっていることが想像できる機能を7つに分類し、それらの不具合によって生じる「困りごと」や「社会・周囲との摩擦」をできるだけやわらげたり解消したりするための具体的な「声かけ例」や「関わり方」を紹介しています。
親御さんがつい口にしがちな「NGワード」を挙げ、それをうまく変換するための考え方やコツ、変換後の適切な声かけ例を併せて提示することで、納得しながら実践できるようにしています。
親御さんの言葉というのは、想像以上にお子さんの心の発達に大きな影響を及ぼします。毎日「NGワード」を浴びせかけていると、発達障害かどうかに関係なく、お子さんはストレスを抱えて心の発達に悪影響が出ます。
逆に、適切な「声かけ」を心がければ、お子さんはストレスから解放され、心の健全な発達が促されます。

繰り返しになりますが、発達障害は生まれ持った特性と、生きている社会のニーズとの間の「摩擦」に由来します。その特性は生涯を通して大きくは変化しませんが、生きる社会を選ぶことで長所にも短所にもなりえます。
お子さんにとって親御さんは「最初の社会」であり、選ぶことができません。親御さんがお子さんにとって「適切な社会」を提供することで、お子さんは自己肯定感を高め、一般社会の中で生きる力(実行機能)を向上させます。
親御さんの手を離れ、自分で生きる社会を選ぶようになったあとのお子さんの人生を豊かで充実したものにするためには、実は幼少期の日常の声かけや関わりが非常に重要です。

本書の内容が、お子さんの心の発達を願う親御さんの助けとなることを、心より願っています。   (「はじめに」より)

【PART1】「発達障害」って、なんでしょう?
・発達障害のタイプと診断基準
・診断名より、お子さん本人の「困り感」
・発達障害の特性は誰でも持っている?!
・お子さんの「困り感」は「社会との摩擦」
・親御さんの「声かけ」は子どもの脳に大きく影響する
《「脳」と子育て こぼれ話(1)》男女の違い

【PART2】子どもの「苦手」「困った行動」と脳の働き
・「苦手」や「困った行動」は脳の働きを反映している
[1]注意
[2]ゴールの選択
[3]作動記憶
[4]他者の表情の理解
[5]他者の思考・感情の理解
[6]不安(混乱・パニック)
[7]反応の抑制・選択
・お子さんの自己肯定感を高め、やりきる力を向上させる
・日常的な「声かけ」のポイント
《「脳」と子育て こぼれ話(2)》自己肯定感とプライド

【PART3】「苦手脳」をラクにする「おうちトレーニング」
・かんたんマインドフルネス
・ストラテジートレーニング・コアトレーニング
・親御さんが表情をつくってお子さんに学習させる
・両親との会話や多彩な他者とのコミュニケーション
・認知再構成法
・見える化

【PART4】子どもの脳にちゃんと伝わる「声かけ変換」
・親御さんがお子さんにいつでもできる13のこと
■声かけポイント(1) やるべきことを正確に伝える
■声かけポイント(2) 冷静さを保つ
■声かけポイント(3) 内容ではなく骨組みを教える
■声かけポイント(4) 起こるかもしれない変化を説明して不安を減らす
■声かけポイント(5) 子どもの感覚や欲求を把握して具体的な声かけをする
■声かけポイント(6) 努力すれば報われることを教える
■声かけポイント(7) やるべきことの優先順位を親子で共有する
■声かけポイント(8) 大切なことは文章で情報交換する
■声かけポイント(9) ダメなことは総体的にダメと理解させる
■声かけポイント(10) 自分の立てた目標をひとつずつ達成させる
■声かけポイント(11) 正解がない質問に対しては向き合わない
■声かけポイント(12) できることに集中させ、できないことで悩ませない
■声かけポイント(13) 「負のらせん階段」を一緒に下りない
《「脳」と子育て こぼれ話(3)》発達特性と標準語(共通語)

【PART5】親御さんに伝えておきたい大切なこと
・「母性」と「父性」のバランスが大事
・母親と父親の役割をたまに替えてみる
・「愛情」だけでは解決できないこともある
・お子さんの特性を「親の責任」と考えない
・がんばりすぎないこともポイント
・一人で抱え込まずに、周囲を巻き込んでサポートしてもらう
・学校・担任の先生との関係
・医療機関での受診にためらいがある場合は、地域の相談窓口へ
・医療機関の上手なかかり方
・ADHDの薬物療法
・ASDの薬物療法
■その他の療育的アプローチ(1) 認知行動療法
■その他の療育的アプローチ(2) ABA
■その他の療育的アプローチ(3) TEACCH
・お子さんの自己肯定感と実行機能を高めるコツ