懐かしい人びと
発売日
2003年08月01日
判 型
文庫判
ISBN
978-4-569-66002-8

懐かしい人びと

著者 内海隆一郎著 《作家》
主な著作 狐の嫁入り』(PHP研究所)
税込価格 776円(本体価格705円)
内容 事故で妻を亡くした男が早春の午後に妻の故郷で見つけたものは……。人びとの胸に去来する思い、心象風景を温かく描き出した感動作。



 勤め先の上司にほのかな恋心を抱いた子持ちの女性。定年を迎えた日に、別れた妻に花束を届け、感謝の気持ちを伝えた男。子供たちがいなくなった家で、インコをかすがいに生きる老夫婦――。さらにボタンを掛け違えてしまった嫁と姑や、孤独ゆえに心を寄せ合う隣人同士など、日常生活の中の何気ない一コマを描いた物語が、渇いた心にしみわたり、忘れていた人生の記憶を呼び覚ます。

 切なく、心温まる人間ドラマが満載された本書。読み進めるうちに、なぜか心の澱みが洗い流されたような気持ちになるのは、著者の端正な筆致ゆえか。

 生きることに疲れていても、本書を開くと、いつでもやり直しがきくような気がする。内海隆一郎の世界は、こんこんと湧く泉のごとく涼やかでありながら、その実、明日へのエネルギーに満ち溢れているのである。生きていることが、いとおしくなる24篇。

 解説は詩人で文芸評論家の安宅夏夫氏。内海文学の真髄を語り尽くしている。