なりひらの恋
発売日
2010年05月06日
判 型
四六判上製
ISBN
978-4-569-77917-1

なりひらの恋
在原業平ものがたり

著者 三田誠広著 《作家》
主な著作 『阿修羅の西行』(河出書房新社)
税込価格 1,540円(本体価格1,400円)
内容 その人生は平安時代の「人間失格」!? 最高の美男、数々の恋愛遍歴、しかし貴族としては不遇だった在原業平をユニークに描く長篇小説。



 在原業平といえば、『伊勢物語』に「むかし男ありけり」と語られた人物とされ、日本史屈指の美男、プレイボーイといわれる。父は平城天皇の第一皇子・阿保(あぼ)親王、母は桓武天皇皇女・伊都(いと)内親王、しかも『古今集』はじめ勅撰集に多数入集している歌才からして、実在の業平もかなり女性にモテただろう。

 しかし業平は貴族としては出世が遅く、不遇であった。華麗な恋愛遍歴と裏腹に、内面はかなり屈折していただろう。その屈折は、あるい太宰治作品の主人公のような「マイナスの魅力」を湛え、女性たちを虜にしたのではないか――本書の主人公「なりひら」は、この前提から誕生した。

 権力や地位にはまるで無関心、マイナス思考でマイペース、恋愛はしても溺れたりしない。どろどろした政争のかたわらで、ひとり静かに恋をし歌を詠んでいる「なりひら」の、どこか憎めないキャラクターに思わずはまってしまう。新感覚で楽しめる古代の恋愛物語。