宮部みゆき著『桜ほうさら』が、2014年元日、ＮＨＫ正月時代劇として放送されます。

原作者の言葉　宮部みゆき

『桜ほうさら』は、文庫本サイズの月刊文芸誌「文蔵」に、毎月原稿用紙20枚ぐらいずつ連載して書き上げた作品です。江戸の町の小さな長屋の小さな人間関係のなかで小さな出来事が起こり、それをひとつずつ乗り越えて成長してゆく主人公を描く小さな物語を、私も楽しく綴りました。
今回、ドラマを撮影しているスタジオにお邪魔して、キャストの皆さんにお会いし、セットを見学させていただいて、何だかぼうっとなってしまったのは、私が描いてきた小さなお話が、現実感と生活感のある〈世界〉として、確かにそこにあったからです。
さらに、オンエアより一足早く、完成したドラマを試写で観せていただいて、ますますうっとりしてしまいました。美しい映像のなかに、私の笙ちゃんと和香ちゃんが息づいていました。原作より洒脱な村田屋の治兵衛さん、権力者の孤独を背負う坂崎重秀の淋しい微笑、色とりどりに装う女性たち、謎めいていて小憎らしいけれど妙に人好きのする押込御免郎――みんなそこに息づいていました。
新しい年が優しさと明るさに溢れたものになりますように。祈りのこもったこの愛らしいドラマを、多くの視聴者の皆様に愛でていただけますよう、私も祈っております。