頁数/仕様
160ページ / 縦:21cm 横:14.8cm
初版
2019年2月
在庫
在庫あり

算数が苦手な発達障害の子のための「数と計算」の教え方

数や量・式や計算が苦手な子どもでも、自分の力を発揮して楽しく学べるよう考案された『安曇野プラン』による教え方をイラストや写真を交えてわかりやすく紹介しています。
著者(肩書) 矢ケ﨑響《がじゅまる教室主宰》
税込価格 1,296円   (本体価格:1,200円)
対象 小学生の保護者
頁数/仕様 160ページ / 縦:21cm 横:14.8cm
初版 2019年2月

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本書では、『安曇野プラン』という、数がわからない段階の子どもでも、自分の力を発揮して楽しく学べるように考案された算数教育の方法を、わかりやすく紹介します。
安曇野プランとの出会いは、とある喫茶店でした。
その頃私は、勤めていた公立中学校の理科教諭を辞め、次に何をしようかと悩みながら路頭に迷っている状態でした。障害児教育に関しては、大学で専門的に勉強したこともなく、最後の1年間勤めていた中学校の支援学級に週に1回授業をしに行っていたくらいで、特に志していたわけではありませんでした。「せっかく学校の先生を辞めたのだから、教育とは関係のない分野で働いてみよう」と、近所の喫茶店でアルバイトを始めたところでした。
ある日、アルバイト仲間のひとりから「響ちゃん、安曇野プランって知ってる? もしよかったら私の代わりに勉強して、うちの息子に教えてくれない?」と言われました。そして数日後に手渡されたのが、厚さ5cmほどもあるワープロ打ちのテキストでした。「おもしろそうだし、やってみてもいいかな」と思い、帰宅してから気楽に読みはじめましたが、その途端にぐんぐん引き込まれていきました。

「数・量の概念がない子どもでも算数を楽しめる」
「数がまだ発見されていない時代の人類史をモデルにつくられた」
「できないことを子どものせい、障害のせいにしない」

これはすごい! ぜひやってみたい! と心が震え、このテキストを書いている講師の先生に弟子入りを志願しました。その後すぐに、月に一度名古屋から来られて宿泊される先生の宿に通い、安曇野プランの勉強を始めました。
それと同時に「お母さんの算数教室」の一員に加えてもらい、一緒に講義を受けたり、映像教材を見たり、2人1組で教え役と子ども役が向き合ってのロールプレーをしたりするようになりました。その中で親しくなったお母さんにお願いして、障害を持つお子さん相手に、未熟ながらも実践するチャンスをいただきました。
ところが張り切って教えはじめてみても、思った以上に難しく、ロールプレー通りには行きませんでした。しかし、数に拒否反応を持っている子どもでも、「やってみよう」と思ってしまう不思議な魅力がプラン自体にあることも感じました。うまくいかないながらも、世間的には「教科学習はまだ難しい」と言われている子どもたちが、楽しそうに、また果敢に課題にチャレンジする姿を見て、やはりこのプランはすごい、極めたい、と思うようになりました。
講義の中で繰り返し言われていたのは、「安曇野プランはマニュアルではない。子どもの認識を読み取ることが大事だ」ということ。その力をつけるために、別のお子さんにも教える機会をいただき、実践を記録し、テキストを読み直し、先生に個人的にアドバイスをいただいてまた実践する……ということを繰り返しました。そして、学びはじめた翌年の2008年には「がじゅまる教室」という、理解に遅れのある子たちのための算数教室を立ち上げるまでに至りました。
今では、最初の出会いのきっかけとなったお母さんの息子さんをはじめ、ダウン症、自閉症、脳性まひ、発達遅滞、発達障害など、さまざまな障害を持つ子どもたちが「がじゅまる教室」に通ってきています。
先日はこんなことがありました。初めて「がじゅまる教室」に来た自閉症のお子さんが、不安なのでしょう、眼をキョロキョロさせ、「ワッ!」とか「ガッ!」とか、奇声を3秒に1回ほど上げ続けていました。ところがレッスンを始め、その子が課題を理解した途端に、その奇声がピタリとやんだのです。あんなに宙を泳いでいた視線が教材にしっかりと向けられ、集中して課題に挑んでいます。帰るときには、最初の奇声が嘘のように落ち着いて、満足げにニコニコして帰っていきました。
こんなふうに、「がじゅまる教室」では、「数が数えられない」「まだ算数は無理なのではないか」と言われている子どもたちや、数がわからなくて見るのも嫌になってしまった子どもたちが、目を輝かせて算数を楽しんでいます。
どんな子も、今の自分の力を目いっぱい発揮し、自分なりに考える作業は、おもしろくて仕方ないのだな、と日々実感しています。
ここで、「安曇野プランとは何か」を簡単に説明するために、山科まみ先生のテキストから文章を引用します。

障害を持つ子どもたちのための算数教育、ことに量と数・計算に至るまでの指導の道を切り拓こうという志を持つ者が集って、1990年夏に安曇野研究会を発足させました。以来、精力的に実践と研究を重ねて、1994年夏に〈一対一対応から加法まで〉の実践プランをほぼ完成させました。これを、短く《安曇野プラン》と呼んでいます。

(中略)

この本では、安曇野プランの「数に入るまで」の主な内容・考え方と、場面を見て何算か決定できるようにするための演算の土台部分のつくり方を紹介します。特に「数に入るまで」の部分は画期的で、将来的には特別支援の算数教育のスタンダードになる、と私は確信を持っています。
「数がわからない」と言われる状態にもいくつかの段階があり、それぞれの段階でできることがいろいろあります。まだ言葉が出ていないお子さん、数を獲得していないお子さんが、今、どこができていて、生活のいろいろな場面でどんなことができるのか。どんなスモールステップをつくればいいのかが見えてきます。だから、特別な支援が必要なお子さんの先生方に限らず、親御さん、ヘルパーさん、普通学級の先生方にも役立つ内容だと思います。
また、子どもの反応を見ながら子どもの認識に近づき、困難や行動の原因を探り、こちらのやり方を変えたりスモールステップをつくっていく方法は、算数に限らず、教育でも生活でも役に立つ方法です。困難や問題行動を子どもの障害のせいにするのではなく、その子の認識を理解できていない周りの大人、すなわち私たちのせいであると考えるだけで、子どもとの関係が良くなります。子どもを見る大人側の姿勢や考え方が変わることで、教え手が成長できる教育法でもあります。
ひとりでも多くの障害を持つお子さんが、自分で判断し、力を発揮し、人の役に立つ喜びを感じられますように。そして、私を含め、関わる大人たちが、子どもの考えや判断を尊重し、試行錯誤を見守り、待ち、小さな発見を見逃さず、本当の意味で「自立」につながるサポートができるように成長できますように。そんな思いを本書に込めています。

最後に、本書の内容は、山科まみ先生による「お母さんのための算数教室(京都ダウン症児を育てる親の会・トライアングル主催)」で学んだことを主なベースとし、森誠治先生の「森通信」や数学教育協議会での講演から学んだこと、「がじゅまる教室」での子どもの反応から学んだ解釈や私なりの実践を織り混ぜたものです(わり算の部分は、安曇野プランとは違いますが遠山孝之先生の自作プリント『わりざん』も参考にさせてもらいました)。山科先生と森先生、「がじゅまる教室」の子どもたちに感謝を申し上げます。特に山科先生には、公私ともにさまざまな面で支えていただきました。
安曇野研究会でのプラン作成時の議論には参加していないので、研究会の意図と必ずしも合致していないところ、また、私独自の解釈があるかもしれませんが、「いち実践家の視点」としてお許しください。  (「はじめに」より)

【第1章】数の理解につまずきがある子のための算数教育
1.自立のための算数
・生活の場面で数が使え、量を扱う場面を解決する
・楽しい算数を
・「数」を手に入れた歴史をたどり土台をつくる
・子どもの反応をよく観察し、認識を予測する
・指導の6つの基本姿勢
〈コラム1〉楽しさを共有しましょう

【第2章】数に入るまで~基礎の確認と習得~
1.「数がわかる」とは?
・数が唱えられても、数がわかっているとは限らない
・抽象と具体を行ったり来たりできる
・見え方の問題
2.「数に入るまで」の流れ
・数の概念を形成するまでの流れ
・一対一対応
・量対量対応の視線対応
・量対量対応の記憶対応
・量対量対応の媒介物対応
・数値化と量対量対応の数値対応
3.一対一対応
・一対一対応の目的
・一対一対応の完成形
・私たちが無意識に頭の中で行なっていることに気づく
・子どもはどう配るか
・一対一対応のスモールステップ
・密着対応A―基準物を1つずつ提示
・密着対応B―基準物をまとめて提示
・密着対応の発展課題
・一対一対応の視線対応
・視線対応の大切さ
・頭の中で線を引くこと
・密着対応と視線対応の中間的な課題
・視線対応の基本課題
・「離れていてもあげたとみなす」ための工夫例
・「同じ」の概念づくり~量対量対応に向けて
4.量対量対応の視線対応
・量対量対応の視線対応の目的
・「バラバラに見る」ことと「まとまりとして見る」ことを同時に行なう
・集合としての見方をつくる
・量の保存、集合の要素の均質性がわかる
・量対量対応の視線対応の完成形
・援助の工夫
・子どもが間違ったときどうするか
・発展課題
5.量対量対応の記憶対応
・量対量対応の記憶対応の目的
・覚えられる量での記憶対応の完成形
・援助の工夫
・「記憶できる量」について
・記憶ではうまくいかない場面
6. 量対量対応の媒介物対応
・量対量対応の媒介物対応の目的
・量を表したもの(タイル・キューブなど)の意味がわかり、使える
・推移律の理解
・量対量対応の媒介物対応の完成形
・人類の歴史をたどるスモールステップ
・媒介物対応のスモールステップ3つの方法
・推移律がわからない子どもへの対策
・簡略化の必然性
7. 数の獲得
・数の把握の仕方
・「4の壁」をどう乗り越えるか
・数を推移律の媒介として使う
・数の勉強に使う道具
・数の把握のための課題~数値対応へ向けて
・量対量対応の数値対応の目的
・量対量対応の数値対応の完成形
・数値対応へのスモールステップ

【第3章】たし算をやってみよう
1.数を使わないたし算
・たし算の全体像
・数がわからなくてもたし算の場面を解決できる
・視線対応で「たし算の場面」を解決
・媒介物を使って解決する
2.数値で用意
・二つの数で「たし算の場面」を解決
・数値で用意する課題の完成形
・二つの発展的な課題
3.式化
・式化の取り組み
・式化
・式を立てて「たし算の場面」を解決
4.合計数で用意
・「合計数」という飛躍
・合計数を求める必然性をつくる
・合計数を求めて用意する
5.「計算練習」の概要
・計算練習の概要
・安曇野プランの流れの中の「計算練習」
・方法の概要
・教具から自立への流れ

【第4章】ひき算をやってみよう
1.ひき算の導入
・どんな「ひき算」像をつくるか?
・ひき算の導入課題
・ひき算の意図が理解できないときの対策
2.ひき算の段階練習
・ひき算の学習の流れ
・段階練習A(対応物を用意したあとで、基準物の一部が帰る)
・段階練習B(基準物が帰ってから、対応物を用意する)
・たし算とひき算の複合練習
・複合場面
3.ひき算の他の型と文章題
・ひき算の計算練習
・求補型、求差型の場面
・文章題
〈コラム2〉子どものペースに合わせましょう

【第5章】かけ算をやってみよう
1.かけ算の指導の概要
・数を使わないかけ算の場面
・かけ算構造の理解
・かけ算特有の難しさ
・指導の流れ
2 かけ算の練習
・均等分布、不均等分布を判断する部分練習
・(1)お店屋さんで自分で用意する
・(2)言葉で○個ずつ○人分と表し、お店屋さんに注文する
・「~ずつ~人分」と言葉で表す部分練習
・(3)合計数で注文する
3. 式と全体像の求め方
・式を立てる練習
・(4)式を立て、合計数で注文する
・(5)九九の表づくり
・(6)九九の暗唱について
〈コラム3〉「生きる力」とつながる算数

【第6章】わり算をやってみよう
1 わり算の考え方
・指導の流れ
・(1)均等に配る(等分除・包含除)
・(2)式を立てて配る
・(3)予想を立てて配る
・(4)かけ算を使って予想を立てる
・(5)基準物・対応物をかくして、かけ算を使って予想を立てる
・(6)かくした数でわり算ができるようになったら