[新訳]歎異抄
発売日
2012年10月19日
判 型
新書判並製
ISBN
978-4-569-80737-9

[新訳]歎異抄
「絶対他力」の思想を読み解く

著者 親鸞著
唯円著
小浜逸郎≪批評家、国士舘大学客員教授≫訳
主な著作 「弱者」とはだれか』(PHP研究所)
税込価格 1,045円(本体価格950円)
内容 「地獄は一定すみかぞかし」という名文句の真意とは? 近代以降の日本人に最も親しまれている仏教書を、平易な訳と解説で読者に贈る。



 なぜ『歎異抄』は、私たち近代日本人にこれほど人気があるのでしょうか。

 いろいろな理由が考えられます。一つは大前提として、そもそも「宗教」という精神形態が、この世を合理的・理性的に割り切って整序していこうとする志向性にさからう本質をもっているということです。それは、近代社会の合理的な割り切り方ではどうしてもはみ出してしまう人間性の情緒的な部分に訴えかけてきます。

 欲望、不安、迷い、悩み、苦しみ、悲しみ、期待感、絶望感、これらに対して、近代社会はさまざまなかたちで一応の環境や装置を用意してくれています。しかし、それこそ人間は「煩悩具足」の存在であることをけっして免れませんから、近代社会が提供してくれる環境や装置だけで完全に満たされることはなかったし、これからもけっしてないでしょう。

 おそらくそのことを、『歎異抄』に惹かれる読者たちは、直感的にわきまえているのだと思います。(訳者「付論」より抜粋)