人名事典

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阿部謹也

(あべ・きんや)
 一九三五年東京都生まれ。一橋大学経済学部卒業後、同大学院社会学研究科を修了。小樽商科大学教授、東京経済大学教授、一橋大学教授を経て、現職。

ドイツ中世史を専攻、『ドイツ中世後期の世界』(七四年)などの業績があったが、一般読者に知られるようになるのは、伝説から中世の社会構造を論じた『ハーメルンの笛吹き男』(平凡社 同年)から。

 その後、つぎつぎとドイツ中世の庶民生活の表裏を描いた作品を発表。日本の中世を論じる網野善彦氏などとともに「中世ブーム」を巻き起こす。網野氏との対談に『対談 中世の再発見』(平凡社)がある。

 最近は、九五年の『「世間」とは何か』(講談社現代新書)で、日本史における「世間」の変遷を辿り、小著ながら重厚な記述によって多くの読者を得る。同書で阿部氏は、「わが国の社会科学者は、学問の叙述に当たっては西欧的な形式を用いながら、日常生活の次元では古来の世間の意識でくらしてきた。したがって、叙述の中に自己を示すことができなかった」と論じている。

 近著に、『「教養」とは何か』(講談社現代新書)がある。

(データ作成:1997年)