夏目家の糠(ぬか)みそ
発売日
2000年05月11日
判 型
四六判上製
ISBN
978-4-569-61115-0

夏目家の糠(ぬか)みそ

著者 半藤末利子著 《エッセイスト》
税込価格 1,540円(本体価格1,400円)
内容 著者は夏目漱石の孫。漱石の時代から受け継がれた糠床の思い出を描いた表題作ほか、日々の出来事をユーモアたっぷりに綴るエッセイ集。



 著者は、作家・松岡譲と夏目漱石の長女・筆子の四女として生まれる。本書は、祖父・漱石のエピソードや父母への想いを綴ったエッセイに、雑誌連載中の食にまつわるエッセイを加えて編集した一冊。著者の愛情豊かな人柄に、日常生活への鋭い観察眼とユーモア感覚とが絶妙にバランスされた、しみじみと心が和む一冊である。

 表題作「夏目家の糠みそ」は、著者が丹念に手入れを続けている糠床の話。著者の祖母(漱石の妻・鏡子)が夏目家に嫁すときに実家から貰ってきた糠床を、著者の母が夏目家から持ってでて、さらにそれを著者が受け継いだものだという。著者の筆を通して綴られる夏目家のエピソードからは、悪妻として評判が悪かった鏡子や、漱石の弟子の三角関係が文壇のスキャンダルとなった筆子の、これまで語られなかった素顔が明らかになる。いまや数少なくなった漱石に関係する生きた証言としても、価値の高い内容である。