氷の海に8時間
発売日
2005年06月22日
判 型
A4判変型上製
ISBN
978-4-569-68551-9

氷の海に8時間
ある兵士の死とのたたかい

著者 高橋宏幸作・絵
主な著作 『チロヌップのきつね』(金の星社)
税込価格 1,320円(本体価格1,200円)
内容 戦時下昭和19年暮れ、千島列島の海で輸送船が沈没し、8時間にわたり氷海を漂流した一兵士の話。戦争の理不尽さを描いた絵本。



 戦時下、昭和19年の暮れ、千島列島のなかほどにあるウルップ島をまもるために派遣された日本の輸送船が沈没した。アメリカの潜水艦の魚雷を受けたためである。上陸を開始していた兵士たちのほとんどは、酷寒の海に投げだされた。この絵本は、そのうちの一人の兵士の8時間にわたる氷海での死とのたたかいを描いたものである。作者高橋宏幸氏の実際の体験にもとづいて描かれた。

 輸送船の沈没とともに、上陸用ボートに乗りうつったばかりのその兵士は海に投げだされ、水中に深く、深くすいこまれた。「このままでは死んでしまう」と、懸命に水をかいてはい上がった。ようやく海面に出てきて樽につかまることのできた兵士の前に、沈没をまぬかれた1艘のボートが近づいてきた。ところが、もうこれ以上人を乗せたら沈んでしまうと、乗せてくれようとしない。

 ……ドラマチックな描写のなかに、戦争の理不尽さに対する告発がこめられた力作絵本である。