正義の喪失
発売日
1999年10月21日
判 型
四六判上製
ISBN
978-4-569-60815-0

正義の喪失
反時代的考察

著者 長谷川三千子著 《埼玉大学教養学部教授》
主な著作 『からごころ 日本精神の逆説』(中央公論社)
税込価格 1,760円(本体価格1,600円)
内容 混迷する平成日本が喪失してしまった道徳、精神とは何か。世の「論潮」に抗う哲人が西洋近代思想の欺瞞と戦後日本人の知的頽廃を糺す。



 「戦後××年を振り返る」という言葉をよく耳にするが、日本の「戦後」とは、実は「敗戦後」なのであり、「敗戦後」とは、喪失の日々にほかならない。いったいわれわれは何を、どう喪失したのか??。 およそすべての戦争は「正義の戦争」である。自らの主張を「正義」とし、それを実現するために戦うという意味において、戦争と呼びうるかぎりのものはすべて「正義の戦争」である。だとするならば、われわれが戦後喪失してしまったのは、「正義」にほかならないのではないか。 「正義」と「平和」とは、近代の国際政治が目指す二つの大きな目標である。しかし実は、両者の間には、克服し難い原理的矛盾がひそんでいる。 戦後われわれが失ったものは、単に「正義」だけではなかった。世界を正しく見抜く目を、われわれは失ってしまった。「国際貢献」「グローバリズム」「男女平等」……。われわれを取り巻くスローガンの欺瞞を、哲学者の目があばいてゆく。