正義の喪失
発売日
2003年01月06日
判 型
文庫判
ISBN
978-4-569-57874-3

正義の喪失
反時代的考察

著者 長谷川三千子著 《埼玉大学教授》
主な著作 『からごころ』『バベルの謎』(以上中央公論新社)
税込価格 713円(本体価格648円)
内容 戦後、欺瞞に満ち満ちた戦後民主主義によって「世界を正しく見抜く目」を喪った日本社会と日本人を冷徹な目で見つめた超一級の文明論。



 本書は「不思議な本」である。丸山真男氏の『「文明論之概略」を読む』を引きながら、「日本研究」のあり方を論考した第四章「難病としての外国交際~『文明論之概略』考」を発表したのは昭和六十二年。第六章の「フェミニズムといふ病理」にいたっては、男女雇用機会均等法が盛んに議論されていた昭和五十九年の論文である。しかし、平成も十五年を数える現在、収録されているどの論文を読んでみても、一向に「古さ」が感じられない。そこが、実に不思議なのである。

 この不思議さを醸し出している理由はただ一つ、表題にもなっている「正義」について、そのほかの「外交交際」「ボーダーレスエコノミー」「フェミニズム」などについての論考が、その時の時流に流されず、軸がぶれることなく、著者の思考が一貫しているからである。副題を「反時代的考察」としは、著者の意図を表明といってよいだろう。

 時流に流されぬ論考。まさに文明論の王道を往く一冊だ。