水の環境史
発売日
2001年05月15日
判 型
新書判
ISBN
978-4-569-61618-6

水の環境史
「京の名水」はなぜ失われたか

著者 小野芳朗著 《岡山大学環境理工学部デザイン工学科助教授》
主な著作 『<清潔>の近代』(講談社選書メチエ)
税込価格 726円(本体価格660円)
内容 「安全な水の確保」という大義名分により日本人は何を失ったか? 近代水道建設をめぐる技術と政策の確執を環境との関わりから読み直す。



 古来より、山紫水明の地と謳われてきた京都。しかし、明治に入り近代水道が建設されたことで、手入れのされなくなった井戸は涸れ、生活からかつての豊潤な名水は失われた。そして人々は現在、日本でも有数の「まずい」「臭い」水道水を飲んでいる。

 当時、「安全な水の確保」という大義名分のもと、東京に奪われた都の威信を取り戻したい市当局、水力発電による電力を確保したい事業家等、様々な勢力の思惑がはたらいた。その結論としての「上水道優先」「琵琶湖を唯一の水源とする」という選択は、安全な水環境の実現という点で、本当に妥当なものだったのだろうか?

 人間が築き上げた技術や産業、それにまつわる選択や政治的判断の歴史を、「環境」と関わりから再評価すること――それが、著者が提起する「環境史」の試みである。無数の論点が錯綜する環境問題、リサイクル問題を整理して考え、現実を評価するための有用な視点を提供する一冊である。