将軍の切り花
発売日
2013年01月15日
判 型
文庫判
ISBN
978-4-569-67940-2

将軍の切り花
帳合屋音次郎 取引始末

著者 藤村与一郎著 《作家》
主な著作 『若様侍始末帖』(学研M文庫)
税込価格 734円(本体価格667円)
内容 江戸の大きな商取引の陰で活動する「帳合屋」の仕事は、つねに危険と背中合わせ。音次郎が勘働きと腕っ節で痛快に活躍する時代小説。



 大口の新規取引にわたりをつけ、斡旋料を受け取る帳合屋。現代でいうブローカーだが、ただの商いではすまされない危険とも背中合わせだ。

 元能役者で端整な容貌、剣の腕も立ち、目端の利く音次郎は、帳合屋きっての切れ者。相棒の笛彦兵衛、壷振りの小万姐さんらとともに、江戸の大口商いの裏で暗躍する音次郎らを描く連作時代小説である。

 大御所・徳川家斉が、「我が葬儀には、我が棺と寛永寺を桜草で染めよ」と遺言して逝った。この情報をつかんだ音次郎たちは、通常は売り物にするほど栽培されない桜草を大量入荷して、大儲けを目論む。そのためにはまず、寛永寺出入りの切り花屋の一角に食い込まなければならないが……(表題作「将軍の切り花」)。

 その他、「大直しの酒」「砂糖の色」の計3篇を収録。いずれも江戸後期の具体的な産物・物品の歴史的な取引状況を踏まえ、読み手を引き込む物語世界が展開する。気鋭の作家による意欲作。

 文庫書き下ろし。