人名事典

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吉本隆明

(よしもと・たかあき)
 一九二四年東京都生れ。東京工業大学卒。詩人、評論家。

 日本知識人の大衆からの遊離を批判、「大衆の原像」を自らの批評の基点としてきた。吉本氏が繰り返し述べているのは、日本の知識人は思想の右左にかかわらず西欧の「モデルニスム」にしたがって思考し、そのため日本の大衆を捉え損うということである。六○年代に国家を幻想と説く『共同幻想論』(河出書房新社、68年)などの著作活動で教祖的な存在となる。八○年代には日本の大衆状況とハイ・テクノロジーの結びつきを積極的に評価、その一方で反原発運動を既成左翼の誤謬として激しく批判。大衆絶対視とラディカリズムがますます強まる傾向を見せている。最近は、オウム真理教の麻原彰晃をキリストの受難と重ねあわせて論じ、周辺の吉本信奉者からも疑義が示されている。作家・吉本ばななの父。

 著書に『「反核」異論』(深夜叢書社、82年)、『わが「転向」』(文藝春秋、95年)がある。

(データ作成:1997年)