人名事典

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水谷三公

(みずたに・みつひろ)
 一九四四年三重県に生まれる。東京大学法学部を卒業、英国バーミンガム大学附属研究所、都市・地域圏研究センターCURSなどで在外研究。東京都立大学助教授をへて同大学教授。九八年より國學院大学教授。

 大学では丸山真男に師事。英国の貴族制度と近代化についての研究によって知られていたが、一般読者の前に登場したのは九一年の『王室・貴族・大衆』(中公新書)以降。同書は大衆社会化が進む英国の十九世紀末から二十世紀の始めに着目し、貴族の時代から大衆社会への転換を独特の文体で描写した。すでに、同書にも現れていたように、水谷氏の著作は英国の変動期を描きながら、同時に日本の大衆化と俗化を振り返る契機となるところに真骨頂がある。九五年の『イギリス王室とメディア』(筑摩書房)で論じた王室とメディアの馴れ合いは、日本の皇室報道を考え直す多くのヒントを含んでいた。この点はダイアナ妃の死去を論じた「英国、五月の突風と九月の嵐」(『中央公論』九七年十一月号)も同様である。

 また、九四年の『ラスキとその仲間』(中公叢書)は、かつてスター的な英国のインテリだったハロルド・ラスキとその時代の知識人たちの物語だが、読めば読むほど戦後日本知識人のカリカチュアに見えてくる。膨大な研究実績をもちながら、さりげなく論じるスタイルは英国風なのかもしれない。希有で孤高の論者である。

 なお、江戸の政治制度についての研究も進めており、その一端を『江戸は夢か』(ちくまライブラリー)で見せている。

(データ作成:1999年)