人名事典

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清水 博

(しみず・ひろし)
 一九三二年愛知県生れ。東京大学医学部薬学科卒。九大、東大教授を経て、金沢工業大学教授。

 生体物性学を専攻。ネズミの小脳の培養で脳細胞の分化過程の観察に世界で初めて成功、バイオホロニクス理論の精緻化も成し遂げた人物だが、「場の研究所所長」という肩書のほうがわかりやすい。『宝石』(94年2月号)「新学問のすすめ」で、いくつかの印象に残る議論を投げかけている。「僕らの感動や想い出はモノじゃなくて場所、情景という分解できない物に結び付いている」「現代科学は生活実感から切り離されたブラックボックスを作り過ぎた。便利さを追求して逆に不便な世界を出現させている」「新聞の写真を拡大してもドットの集まり。解釈力とは関係づける能力。ゆえに認識は外でなく内にある」。禅問答ではないが、現代文明に対するわれわれの漠然たる不安をうまく言い当てている。

 著書に『生命を捉えなおす』(中央公論社、90年)など。

(データ作成:1997年)