PHP研究所主催 2024年度文部科学省後援
第8回PHP作文甲子園 優秀賞受賞作
古閑明花
福岡県福岡県立折尾高等学校3年(受賞当時)
本は私のたからものである。幼いころから本が大好きで、漫画も小説もよく読んだ。物心ついたときから私は人間関係において相手の顔色をうかがい、嫌われたくないために無理をすることが多かった。自分がすり減っていくのを感じながらも見ないふりをしていたが、そんなとき本は私の逃げ道となった。
本は豊かな感情や多様な価値観、無数の世界を教えてくれた。本を読んでいるときだけは、現実の嫌なことをすべて忘れることができた。振り返ってみると、私は子供らしくない子供だったが、それでもあのころの私にとって、本は私の小さな世界を救ってくれた大切なたからものであった。
私は本の中でも、特にファンタジーやご都合主義のフィクションが好きである。甘いハッピーエンドにひたりながら眠ることが私の楽しみであった。
他人から見れば馬鹿らしいと思うだろう。だが私はだれにも理解されなくてもかまわない。そう思えるようになったのは本のおかげである。自分の思いは自分だけのものであると理解することで、しだいに自分にとって生きやすい道を見つけることができた。
また、本は世の中の「当たり前」や「普通」が苦しく思えても、それに向き合う勇気をくれた。一つひとつの本の中にはたくさんの人間が生きていて、それぞれに背景があり物語を形づくっている。物語の登場人物たちの考え方や生き様は、似通ったものもあるけれどすべて異なっており、どれも人の力強さを感じた。そうしたものが、私に何事にも向き合う大きな勇気をくれたのである。
今後もきっと幸せな出来事だけでなく、つらい出来事にも直面するだろう。しかし、それでもくじけず私のたからものを抱きしめ、自分らしさを大切に生きていきたいと思う。