京都人の舌つづみ
発売日
2004年07月15日
判 型
新書判
ISBN
978-4-569-63612-2

京都人の舌つづみ

著者 吉岡幸雄著 《染色家》
主な著作 『日本の色を染める』(岩波新書)
税込価格 935円(本体価格850円)
内容 京都に伝わる伝統的な「和」の味とは? 湯豆腐、湯葉、鱧、千枚漬けなど、歴史や調理法を織り交ぜながら紹介した美味礼賛のエッセイ。



 「うちは、レールものを買わへん」という祖母の台所哲学によって味感を育まれた著者。いまも“ほんまもん”を求めて「京を食う日々」を暮らす。

 春には掘りたての筍、夏には鮎や鱧、秋から冬には京野菜の鍋と漬物、さらに豆腐や湯葉や生麩、そして、鮒ずし、鯖ずし、「へしこ」といった発酵食品に舌つづみをうつ。かしこまった京料理におさまらない著者の食欲は、真摯で求道的でさえある。「かつて日本は貧しかったが、食材への気配りは京都だけでなく全国どこの家庭にもあった」と懐かしむ。

 植物染を専らとし、日本の伝統色と染織史の研究家でもある著者は「料理も染色も基本は同じ」と語る。すなわち「素材を見極める」「時間を見計らって火の強弱を気遣う」という点が同じだという。そして、染色も料理も「早く済ませたいと、どこかで手抜きをすると必ず失敗する」という。滋味あふれる文章と鮮やかな写真が、食への豊かな心を呼び覚ます。垂涎のエッセイ集である。