中井俊已(なかいとしみ)

作家・教育評論家。1959年、鳥取県生まれ。大学在学中、聖ヨハネ・パウロ二世教皇からカトリック受洗。小中学校に23年間勤務後、現在は執筆と全国各地で講演活動を行なっている。著書に、『感謝の習慣が、いい人生をつくる』(PHP研究所)など多数。
 

まず笑顔でいることが、幸せへの第一歩だと中井さんは言います。

「いいことが起きたから笑顔になるのではなく、笑顔だからいいことが起きる」

10年ほど前の話です。ある会社の朝礼で、社員のIさんが、この言葉を黒板に書きスピーチをしました。社長はじめ社員たちも大いに気にいったそうです。

その後、この言葉は会社のモットーになりました。特製の紙に印刷され、社内の応接室やトイレなどにも張られ、名刺にも記載されるようになったのです。毎日、皆が笑顔を心がけると、職場の雰囲気が明るくなりました。

次第いにお客が増えて、会社の業績も上がってきたそうです。

そんな子細をIさんから手紙で教えてもらい驚きました。先の言葉は拙著に書いたものでしたが、私自身も笑顔の生み出す効果に改めて感じ入ったのです。

さて、笑顔だといいことが起こるのは、なぜでしょう。私は次のように考えています。

1.笑顔だと、相手を大切に思う気持ちを伝えられる。
2.笑顔で接してもらった人には、喜びが生まれる。
3.おのずと人間関係が良くなる。
4.笑顔は人の表情もまわりの雰囲気も明るくする。
5.笑顔は健康や美容にもいい。

その結果、会社や店が活気づき、お客が喜び、業績が上がるのは当然でしょう。

「笑う門には福来きたる」とは、つくづく真実なのです。ちなみに、私は何もしていないのに、この会社の商品(焼酎の詰め合わせ)を贈っていただきました。笑顔を提唱したIさんは、数年前から社長となって活躍中です。
 

笑顔は子どもに愛と光を与える

笑顔は、子育てや教育においても効力があります。イソップ童話にある「北風と太陽」を思い出してみてください。

旅人のコートを脱がすために、北風は力いっぱい強い風を旅人に吹きつけ、外套を脱がせようとしました。一方、太陽はにこやかに暖かな光を旅人に与え続けました。

どちらが成功したかは、ご存じですね。

ガミガミ怒ってばかりの子育ては、この北風と同じです。子どもは、反発心をもち、拒否するか、従ってもイヤイヤながらでしょう。

結果、子どもの自主性はいつまで経っても育たないのです。

ニコニコしながらの子育ては、太陽のやり方と同じです。

時間はかかりますが、子どもは笑顔に見守られ、理解され、励まされ、自主性をもって行動していけるのです。そうやって自分を育てくれた親や祖父母、先生にいずれ深く感謝するようになるでしょう。

笑顔は満面の笑みでなくても大丈夫です。

しかめっ面をやめて、口角をあげて、相手に視線を向けてほほえみかけるのです。
 

マザー・テレサのほほえみのように

ほほえみと言えば、私は尊敬するマザー・テレサを思い出します。彼女はインドの貧民街で貧しい人や重病人のために活動中も、ほほえむことを忘れなかったのです。

彼女のまなざしやほほえみを通して、「あなたも大切な人ですよ」というメッセージを受け取りながら、彼らは涙を流し、感謝の言葉を口にして天国に旅立っていったのです。

ほほえみは、相手に私たちのもつ温かな愛を伝えます。悲しむ人の心を癒し、喜びの光を与えます。友情を育て、幸福をもたらします。ほほえみを与えても何も減ることはありませんが、もらった人も与えた人の心も愛によって豊かになるのです。

マザー・テレサは、ほほえみについて、次のような言葉で教えてくれたことがあります。

「平和は、ほほえみから始まります。笑顔なんかとても向けられないと思う人に、1日5回はほほえみなさい。平和のためにそうするのです」

苦手な相手であれば、ほほえむのは難しいものです。自分自身も疲れていれば、なおさらです。でもそんなときだからこそ、自分から目の前の人にほほえむことは、ささやかだけれど、確かな愛の始まりなのです。それゆえ、心に平安が生まれ、喜びがもたらされ、幸福感が広がります。

ときに人生に傷つき、疲れることのある私たちは、傍らにほほえんでくれる人が必要です。Iさんの会社の方々のように、マザー・テレサのように、私もできるだけまわりの人に優しいまなざしをもってほほえみ、笑顔で接していければと思います。
 

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