DJ KOO(ディージェイ コー)

1961年、東京都生まれ。'93年、ダンス音楽ユニット「TRF」のメンバーとしてデビューし、リーダーを務める。ソロ活動のほか、バラエティー番組でも活躍する。最新刊は『DJ KOO流 心・体・脳の整え方』(PHP研究所)

昨年還暦をむかえたDJ KOOさんの、日々を楽しく過ごすための工夫とは――。

「音楽を通して、みなさんとポジティブなエネルギーを共有したい」
そんな思いで、40年以上、DJとして活動してきました。毎日が刺激的で、20代のころから「自分は元気!」と全力で走り続けてきたんです。
ところが5年前、あるテレビ番組の企画で人間ドックを受けたときのこと。9.8ミリの脳動脈瘤が見つかりました。通常は2ミリくらいのものでも、すぐに手術が必要なのだそうです。
すでに左の視神経が圧迫されていて、放っておくと左目の視力を失い、しかも大きな脳動脈瘤なので、いつ破裂してもおかしくない状態でした。そうなれば、命を落とす可能性もあると言われました。
今まで健康のことなど考えてこなかった人間が、いきなり死の可能性をつきつけられ、数日後のことさえも考えられなくなってしまったんです。目の前が真っ暗になるとは、このことかと思いました

「KOOさんの人生の手術をします」

そんな僕に、病気に立ち向かう勇気をくれたのは、家族と医師の言葉でした。
僕の病状を聞いて、妻も娘もかなり動揺したと思います。でも二人は、いつもと同じように接してくれました。そのいつもの姿を見て、落ち着くことができました。
手術を受けるにあたって、僕はなるべく体を傷つけたくないと考えていました。ただ医師には「カテーテルでの血管内手術もありますが、完治を目指すなら開頭手術のほうがいい」と言われたんです。
聞くと、頭の真上から耳のうしろまで大きく切開し、さらに脳動脈瘤が破裂しないように首に穴をあけて、そこから血液を逃がしながら手術をするとのことでした。
「この手術を自分が受けるのか......」
そう考えると、さすがに怖くなって動揺しました。医師は不安そうな僕を見て、こう言葉をかけてくださいました。
「私は、脳動脈瘤を治療するだけでなく、KOOさんの人生の手術をします。手術後もこれまでと同様に、DJを続けたり、ご家族と一緒に生活したりできるように、命をかけてやらせていただきます」
「人生の手術」という言葉に背中を押されて、開頭手術に決めました。手術は6時間半かかりましたが、無事成功。僕も家族も本当にホッとしました。
ただ、手術後のリハビリが本当に大変でした。近所をゆっくり散歩することから始めたのですが、行き交う人と、ろくに歩けない自分を比べて落ちこんで......。家族には一番見せたくない姿でした。
それでも、妻と娘は、暗くなりがちな僕に、こう言ってくれました。
「パパは本当にラッキーだよ。大きな脳動脈瘤が奇跡的に見つかって、しかも手術が成功したんだから」
考えてみれば、そうなんですよね。二人の言葉で気持ちを切り替えられて、リハビリに集中することができました。
あらためて、支えてくれる家族への感謝の気持ちがわきあがりました。そして、今まで当たり前と思っていたことが、そうではなかったと気づくことができました。

「無理です」と口にしてもいい

病気を経験してから、僕はそれまでとガラリと変わって、自分の体を大切にするようになりました。
自分をいたわることは、家族を大切にするのと同じだと気づいたんです。食事は3食バランスよく、野菜を多く、塩分はひかえめに、を家族で実践しています。
気持ちの面でも、無理をしなくなりました。実際、本当にしんどいときは「無理です」と口にすることもあるんです。
以前は、「すべてを完璧にしなきゃ」と考えていたこともありましたが、そのときの自分の力を出せればそれでいい、と考えられるようになりました。
ほかにも、日々生きていると、ちょっとしたいやなことが起こりますよね。そんなときは、頭のなかに「消去ボタン」を思い浮うかべて、それをポチッと押すんです。押したら、いやなことはもう考えない。
実際にボタンを押すわけではありませんが、頭のなかでやるだけで気分がスッキリします。同じ時間を過ごすなら、負の感情にひきずられるより、さっとボタンを押して楽しいことを考えたいんです。
普段の言葉の使い方も意識するようになりました。僕は「疲れた」「忙しい」「眠い」の3つを使わないと決めています。
つい言いたくなってしまうときもあるんですが(笑)、言霊はあると僕は思っていて、たとえば「疲れた」と口にすると、本当に疲れてくる気がするんです。
僕はこの3つですが、みなさんそれぞれ自分の「使わない言葉、三選」を決めて意識してみるのもいいかもしれません。
こんなふうに病気をきっかけに、日々を楽しく、おだやかに、健康的に過ごす工夫をしてきました。このたびの書籍『DJ KOO流 心・体・脳の整え方』では、ほかにもたくさんの方法をご紹介しています。
昨年還暦をむかえましたが、これからも変わらず、元気に、DJを続けていきたいですね。DO DANCE!