老人と棕櫚(しゅろ)の木
発売日
2003年10月01日
判 型
四六判上製
ISBN
978-4-569-62867-7

老人と棕櫚(しゅろ)の木

著者 林秀彦著 《脚本家、作家》
主な著作 『「みだら」の構造』(草思社)
税込価格 1,760円(本体価格1,600円)
内容 棕櫚は花言葉で「勝利」――。最愛の妻に去られ、孤独と死に対峙しつつも、「生」への希望を見出さんとする一人の老人の半生を描く。



 棕櫚の花言葉は「勝利」――。

 才能、名声、そして欲望を欲しいままにした若き時代を経たのち、日本国に絶望し、異国の地・オーストラリアへと渡った主人公・神馬伸。だが病魔に襲われ、死の淵を覗いて生還してからというもの、脳裏によぎるのは、あれほどまでに憎み、唾棄すべき対象であったはずの祖国への想いだった。

 やがて齢を重ねるとともに身体の限界を覚え、古希目前にして愛する者=信じる者に棄て去られ、生きる希望、ロマンを見失いかけたとき、老人(神馬伸)はある決意をする。若かりし頃に「生きることの風景なのか、死の風景なのか」と自身を自問自答させた“棕櫚の木”の風景を訪ね、老いたる者の「生」とは何かをいまこそ追求しよう、と。

 「老いと生」について関心が高まっている現在、「生」への希望を見失った一人の老人男性の葛藤と解放を、洗練された筆致で高らかに謳いあげ、世の中高年男性にエールを贈る“フィクション・エッセイ”。