幸福と成功だけが人生か
発売日
2007年09月10日
判 型
新書判並製
ISBN
978-4-569-69495-5

幸福と成功だけが人生か
「悲しみ」の日本精神史

著者 山折哲雄著 《宗教学者》
主な著作 『ブッダは、なぜ子を捨てたか』(集英社新書)
税込価格 1,045円(本体価格950円)
内容 孤独とは何か。人生の無常とは何か。幸福願望ばかりが肥大化する現代日本において、日本人の底流に流れる大切な視点を提示する一冊。



 宗教学の権威である著者は問う。「幸福と成功を追い求めるだけが人生なのか」と。むしろ著者は「不幸な悲しみに耐えている人間に尊敬を抱く」とも。

 その問題意識のもと、自らの死を予感していた源実朝、親族を皆殺しにした北条時頼、乞食願望を持ち続けた松尾芭蕉、キリスト教に入信した支倉常長、死んだ妹の魂を追いかけて旅した宮沢賢治、殉死の予行演習をしていた乃木希典、鴎外晩年の著作に執着した松本清張、死後も自分の欲望を満たそうとした谷崎潤一郎、『黒い雨』に慟哭の通奏低音を挿入した井伏鱒二、上官の罪を背負って処刑された青年学徒などを取り上げつつ、縄文の昔から日本人の底流に流れ続ける「悲しみ」の旋律を描いた渾身の作品。

 幸福願望ばかりが肥大化する現代において、「孤独とは何か」「人生の無常とは何か」を考えるうえで大切な視点を示してくれる一冊でもある。2002年1月に発刊された『悲しみの精神史』を加筆・改題して復刊。